328話 ボロ宿で密会
メイは宿で部屋を借りる事にし、そこで話をする事にした。
「こんなボロ宿で大丈夫なのか?」
「こんな場所で秘密の話し合いをするとは思わないですから。こういう場所の方が逆に安全だったりしますよ。」
「そういうものか。さて、改めて自己紹介をしよう。俺はイガレス=ベイガーだ。単刀直入に聞こう。あなたは何者だ?」
「私はメイと言います。王国から来ました。第二皇子を保護しろと命令を受けて帝国に来ました。まさか初日に遭遇するとは思わなかったですけど。」
「なぜ王国が俺を保護しようとする?」
「さあ?私の依頼主に聞いてください。ただ、殺されたり拷問されたりすることは無いでしょう。」
「どうしてそう言える?」
「殿下は私に抜けられると困りますから。私が一言言えばそうせざるを得ないんですよ。」
「お前、何者だ?」
「私はただの学生ですよ。どうして誘拐されたなんて言われていたんですか?」
「兄上に命を狙われていたからさ。それもこれもアザーグリス将軍が死んだせいで皇太子派の連中が調子づいたんだ。」
「アザーグリス将軍って王国を攻めた将軍ですよね。」
「ああ、四神将の一人で俺の事を何かと世話してくれてたんだ。」
「あの人が死んだとは、殺しても死ななそうだったのに。」
「将軍は毒で殺されたんだ。あの人の仇を討ちたい。協力してほしい。」
「それは難しいです。他国の人間が首を突っ込む問題ではありません。魔族と繋がっているのであれば話は別ですが、その証拠はありますか?」
「…無い」
「であれば、私にはどうする事もできません。一旦仕切り直す必要があるでしょう。私と王国に行くこともできますが、どうしますか?」
「このまま帝国にいてもどうしようもないだろう。…王国に行くよ。」
「分かりました。それでは早速出発しましょう。この街にはどうやって入ったんですか?」
「馬車の荷台に紛れ込んでたんだ。」
「私は1度外に出て門を通らずに帰ってくるのでここで待っていてください。」
「大丈夫なのか?」
「私を信じてください。」
街の外に出たメイは壁を乗り越えて再び街の中に入った。
「戻りました。」
「意外と早かったな。それじゃあ行こうか。」
「荷物は少ないんですね。」
「皇子だって証明出来る物以外持って来れなかったんだ。」
メイとイガレスは壁の近くに行く。
「これをどうやって乗り越えるんだ?」
「こうするんです。」
メイはイガレスを抱えて壁を駆け上がる。
「嘘ぉぉおお!」
「叫ばない。バレたらどうするんですか。」
「あんな動きをするなんて普通思わないだろ!」
「ゆっくり壁をよじ登る訳無いでしょう。」
「なんでただの学生がこんな事できるんだよ。」
「そこまですごくもないでしょう。」
「無感動すぎるだろ。」




