327話 色々と想定外
メイはヘイミュート辺境領の本邸に来ていた。
「帝国に行く事になるとはね。どれくらいの間行くつもりなんだい?」
「とりあえず2週間ほどです。試験をサボるのはさすがにマズイので。」
「そうか。あ、そうだ。これが第二皇子の人相書きだよ。」
「あ、ありがとうございます。どうやって探そうかと思ってたんですよ。」
「結構行き当たりばったりだね。」
「人探しなんてした事無いので。」
「第二皇子の名前はイガレス=ベイガーだよ。くれぐれも気をつけるように。君がケガをするとカレンちゃんが悲しむからね。」
「はい。」
「ところで、カレンちゃんはどれくらいの強さなのかな?」
「大抵の相手には負けませんね。上級魔族でも逃げに徹すれば何とかなるでしょう。」
「そうなると、下手に護衛を増やすよりも目立たせない方が安全か。」
「それがいいと思います。」
「護衛として雇った人材が全員出払うからね。どうしようかと思ったけど、そこまで心配はいらないみたいだね。」
「なるべく早く帰ってくるようにしますね。」
「そうして貰えると助かるよ。」
メイは偽造された冒険者証を使い帝国に入った。
国境からもっとも近いバレルという街に入ると物々しい雰囲気だった。
「兵士がたくさんいますね。何かあったんでしょうか?」
美味しそうな匂いを漂わせている屋台を見つけ、商品を買うついでに話を聞いてみる。
「こんなに兵士がいるなんて何かあったんですか?」
「ん?お嬢ちゃん知らないのかい。第二皇子様が誘拐されたらしい。それで他国に連れていかれないようにこの街で監視してるんだとさ。」
「皇子が誘拐?そんな事があったんですね。」
「あまり大声で言うもんじゃない。まあ、最近物騒だからお嬢ちゃんも気をつけな。」
「そうですね。ありがとうございます。」
「ふむ、帝都に行けば見つかると思っていましたが、逃げ出しているとは。反皇太子派の最大勢力がこのバレルがある地域一帯を治めるバイレル侯爵でしたね。領都にでも行ってみましょうかね。」
そう独り言を良いながら歩いていると、少年とぶつかった。
「すいません。少し考え事をしていて。」
「いや、俺が周りを見ていなかったからだ。すまない。」
「ん?…第二皇…」
「しーっ!ちょっとこっちに来て!」
メイの口を塞ぎ、路地裏に引っ張り込む。
「なんでバレたんだ?」
「それで変装してるつもりなんですか。」
「いかにも庶民の格好をしているだろ?」
「庶民って、普通そんな服は着ませんし、シワもない。これでは貴族がお忍びで遊んでいると思われますよ。」
「な、なんだって!」
「はぁ、ひとまずどこか話が出来る場所に行きましょう。」
「そうだな。」




