320話 召喚
ダニエルと雑談していると部屋にタムリが入って来た。
「お待たせしました。それで、何が必要なのですか?」
「魔石と魔法陣を書くための塗料を、魔石は出来るだけたくさんあれば助かります。」
「ふむ、それだけで大丈夫なのですかな?」
「はい。表で買うと目立ってしまいますからね。」
「分かりました。すぐにご用意いたします。」
タムリはそう言うとすぐに部屋を出ていった。
「目立ちたくないだけでこんな所に来るのか?」
「私にも事情があるんですよ。」
しばらくすると箱に満杯になった魔石と特殊な塗料を運んできた。
「今すぐ用意出来るのはコレだけですね。」
「ありがとうございます。これだけあれば十分です。」
「何か大変な事が起きるのでしょうか。」
「何も起こさないために私達は動いています。何か手伝って欲しいことがあればまた来ます。」
メイは空間拡張を施したカバンに魔石と塗料を入れ、街の外に向かった。
「どうしてヤツらが急に勢力を拡大できたのか分かったよ。」
「どうしてだと思います?」
「魔道具だ。平騎士が使っている魔道具じゃあ比べ物にならないほどの高性能な魔道具を末端のヤツが持っていやがった。あんなのと抗争なんてしたら勝ち目なんてあるはずない。」
「そうですね。まぁ、それだけではないですが、大きな理由の1つですね。」
「それはそうと、魔石を使って何をするつもりなの?」
「召喚をしようと思います。」
「何のためのに?」
「森の監視です。不審な人物が来たら私に知らせる。そして逃げられないように足止めをする。これらをやってくれる便利な存在を呼ぼうかと思いまして。」
「そんな魔物いたか?」
「いますよ。正当な対価さえ払えば指示通りに動いてくれる便利な存在が。」
メイは街の外に出て、人目につかない場所に移動する。
そこで特殊塗料を使い召喚陣を描いてく。
しばらくすると、召喚陣が完成し、その上に魔石を並べる。
魔石には壊れる寸前までメイの魔力が充填されており、かなりの魔力が感じられる。
「出てこい悪魔、私の役に立て。」
メイがそう言うと召喚陣が光だし、濃密な闇を纏った悪魔が3体現れた。
「あ、悪魔だって!?」
「おおー、すごいわね。」
「何をお望みですか?」
「この街の南にある森の監視をしてください。不審な人物が現れれば、私に知らせるように。そこからは私の指示を待ってください。」
「御意に。この魔力だと5日程度の日数になりますが、それでよろしいですか?」
「はい。状況が動かなければ追加で魔力を渡します。それ以降の契約はその時に決めましょう。」
「それでは良い結果をお待ちください。」
陰に沈むように消える悪魔。
「悪魔をこの目で見ることになるなんて…」
「すごかったわね。強そうだったわ。」
「お前は怖くないのか?」
「怖い?あの悪魔達よりメイの方が強いもの。怖がる必要なんてないわ。」
「た、確かに。もっとヤバいのが目の前に居たわ。」
「それはどういう事か、教えてくれますか?」
「えーと」
「先生、口は災いの元って言うのよ。」
「俺もそれを実感してる。」




