316話 菌
メイが悲鳴が聞こえた場所に向かうと数人の生徒が魔物と遭遇していた。
その内の一人は腕に傷を負っていた。
1年生を庇ったのだろう。
「先生にこの事を報告するんだ!」
「私たちがコイツの相手をするから1年生達を連れて行って!」
立ちはだかる生徒を攻撃するために魔物は触手を伸ばす。
メイは間に入り、それを切り飛ばした。
「連れて行くことはできません。あなた方を連れて行けば、他の生徒が被害にあう。」
「どういう事だ。」
「あの魔物の周りに粒子が飛んでいるのが分かりますか?」
「ああ、薄らと見えるな。」
「魔物と接触した事で私達もアレを吸い込んでいます。体内に未知の粒子を吸い込んだまま本部に戻れば、どうなるか分からない。だからこそ、ここから逃げる事は私が許しません。」
「アレがタダの砂埃だったら良かったんだがな。」
「何とかする方法はあるの?」
「魔物を倒した後、あの粒子を焼き払う以外に方法はありません。」
「俺たちの中にあるのはどうするんだ。」
「後で考えます。今は目の前の魔物に集中してください。」
魔物は触手による攻撃や飛行して急降下攻撃などの攻撃をしてくるが、どこかぎこちなさが拭えない。
メイが首を切り落としても触手のような物で断面を繋ぎ合わせていた。
「めんどうですね。付与魔法«炎剣»」
炎を付与した剣で敵を焼き切る。
すると、断面が燃えて繋ぎ合わせる事が出来なくなった魔物だが、頭が無くなっても絶命する事はなく、バチバチと羽を振るわせて何度も木に激突していた。
魔物がメイの背後の木に激突した時、悲鳴が聞こえた。
「きゃ!」
「なぜあなたがここにいるんですか。結界から出ないようにと言ったはずですが。」
「だって、あんな所に取り残されたら嫌に決まってるじゃない。」
「魔物と戦う前に結界を張っておくべきでしたか。」
「おい、魔物の動きが止まったぞ。」
「さすがに死にましたか。」
「それで、焼き払うって言ってたわよね。」
「待ってください。どうしてあんな変異した魔物が出現したのかの原因を突き止めなければいけません。少し調べるので休憩でもしていてください。」
メイが触手や粒子を調べていると、それはカビとキノコが融合した物だと分かった。
「キノコの菌糸とカビの菌根の融合?いや、それだけでは説明がつかない事もありますね。そもそもこのカビはこの森にはいない種類のはず。誰かがここにカビを撒いた?何のために?」
「すごいブツブツ言ってるな…何か分かったか?」
「魔物の周囲で舞っていた粒子は胞子でしょう。普通の胞子なら簡単に排出できるのですが、この胞子は魔力を纏っているため胃酸でも溶ける事無く体内に巣食ってしまう可能性があります。」
「もしそうなれば、どうなるんだ。」
「当然ですが、死にます。いえ、死ぬだけならまだマシな方でしょう。先ほどの魔物のように身体を乗っ取られる可能性があります。」
「アレは菌に操られていたってことか?そんなの現実にありえない。」
「私も実物を見なければ戯言だと切って捨てていたかもしれませんが、魔物の頭部を見てください。」
「これは…!」
「脳が入っているはずの頭の中にはビッシリとキノコが入っているんですよ。菌にとって頭とは血管を繋げている部位でしかない訳です。」
誰のせいなのか分からないが、確実に生徒をターゲットにした攻撃だと感じたメイだった。




