315話 ただ事ではなさそう
合同合宿には課題があり、それは薬草などの植物を採取するという物だ。
配布される地図にはマークがされており、その場所に目的の植物がある事を示している。
そのため、冒険者として活動した経験があるなら1日で踏破できるが、1年生でそこまでの体力と経験を有している生徒はほとんどいないため、2泊3日という日程になっている。
「じゃあ、まずは1番近くのマークに行くわよ。」
道中で魔物が出るが、魔物狩りを経験しているらしく取り乱す事もなく倒している。
メイは1歩後ろに引いて本当に危なくない時以外は動かない事にした。
「やっぱり私1人で十分だったわね。フン、アンタはそこで見てるだけでいいわよ。…何よなにか言いたそうね。」
「では言わせてもらいますが、向かっている場所と方向が違いますよ。」
「え?そんなハズはないわ!まっすぐ進み続けてきたじゃない!」
「森では障害物のせいでまっすぐに進むことが難しい上に魔物の対処でさらに方向がズレています。」
「それなら早く言いなさいよ!」
「話しかけるなと言うから…」
「言い訳なんていらないわ!使えないわね。」
メイはカレンがワガママに育てばこうなったのだろうかと考える。
「いや、ないな。」
「何か言った?」
「いえ、なにも。」
「はぁはぁ、疲れたわね。休憩するわよ。」
「目的地はもう少しです。そこまで頑張りましょう。ただでさえ出遅れているんですから。」
「分かったわよ!行けばいいんでしょ、行けば!」
「頑張ってください。」
その後、薬草の群生地に着き、採取を行う。
「なんと言うか、小さいモノばかりね。」
「大きいモノは採られてしまったのでしょう。」
「なんとか挽回しないと。アンタならどう行くのよ。」
「私ですか?私は体力が有るうちに1番奥から戻ってきますね。」
「そっちの方が効率が良さそうね。じゃあ、行くわよ。」
「それ地図逆ですよ。」
「…ち、ちょっと間違えただけじゃない!」
「間違えは誰にでもあることですからね。さあ、行きましょう。」
1時間ほど歩き、休憩していると
「ん?何か向こうが騒がしいですね。」
「アッチはキノコを集めてくる場所だったわよね。」
「魔物でしょうか?」
「どうせ、すぐ誰かが倒すわよ。」
「いえ、それは難しいかもしれません。」
「どういう事よ。」
「結界を張っておくのでここから出ないようにしてください。」
「ちょっと!待ちなさいよ!」
メイは微かな悲鳴を聞き、ただ事ではないと判断し向かう。
その場に着くと、昆虫型の魔物が1匹と数人の生徒がいた。
魔物の外骨格の内側から生えている触手が普通の魔物ではない事を示していた。




