304話 作戦勝ち
メイは剣を縦に振り下ろす。
無造作に行ったその動作で、大地がヒビ割れた。
「危ねぇな。大人しくしろ!」
カイトはメイを捕まえようとするが、当然ボコボコにされる。
「痛いんだよ!このバカ!」
「お兄さん…暴走してるんだから分からないって…作戦があるんだけど、聞きたい?」
「あ?どうすればいいんだ?」
「さっきの魔族達は闇の力を注入したって言ってたんだ。なら、聖なる力を注入すれば元に戻るんじゃないかな。」
「それって聖剣をぶっ刺すってことか?」
「そうなります。恨まれたりしないかな?」
「大丈夫だろ。背中の傷も治ってるし。」
「僕はあの人の動きについていけないから隙を作って欲しいです。」
「難しいこと言ってくれるな。それでも、やるしかなさそうだな。」
カイトはユリエスからメイの気を逸らせるために、回り込んで移動する。
「こっちだ!」
メイは魔法を使って追いかけていく。
「ハッハー!そんなの当たらないぜ。」
カンに障ったのか、魔法の数が増えた。
「それは予想外!ぎゃあああ!」
チーンと倒れているとメイが襲ってくる。
メイが剣を振るだけで衝撃波が発生し、カイトは吹き飛ばされないように踏ん張らなければならなくなった。
そのせいでどうしても隙が発生ししてしまう。
「クッソ!」
ガキ!と剣どうしがぶつかり合う。
鉄のハンマーで殴られたような重みが腕にかかり、立ち止まらざるを得なくなる。
そこを狙ってメイは魔法を放つ。
「ヤバ!」
「止まっている隙を狙っているのはアナタだけじゃないぞ!」
ユリエスは剣を振り下ろした。
剣は防がれることなくメイの身体に当たったが、肌に刺さることなく弾かれてしまう。
「え!?」
「ク…!ウラァ!」
カイトは剣を弾き、自分への攻撃を無視しながらメイに傷を与える。
「ガハッ!…今だ!思いっきりやってやれ!」
「ハアアア!」
グサリと刺さった剣に聖なる力を注入し、闇の力と中和させる。
「うぐぅううう!!」
メイは苦悶の表情を浮かべる。
「コレでどうだ!」
「ああああ!」
メイは倒れ、起き上がらない。
「イテテ…おい、大丈夫か?」
カイトがメイを揺らしても、反応は無かった。
「死んでないよな。おい!」
「やめなさい!」
「グフ!」
「あ、エイラさん。」
「その子は魂が損傷してるのよ。変に動かしたら本当に死んじゃうわよ!」
「まだ生きてるのか?」
「生きてるわ。気を失っているだけよ。」
「良かった〜。それにしても街がめちゃくちゃだ。」
「最後のトドメをしたわね。」
「色々世話になったな。俺たちは帰るよ。また会うことになるかもしれないが、そん時は頼むわ。」
「最後に名前を教えてください。」
「そうだなぁ。俺の事はシグって呼んでくれ。」
カイトはメイを抱き上げ、去っていったのだった。




