298話 怪しくない事が怪しい
カイト視点
勇者の視線の先が気になったカイトは単独で調べてみることにした。
「あの時勇者の視線の先は微妙に俺からズレていた。俺の位置が分かっていなかっただけなのか。それとも他に見ていたヤツがいたのか。なんだか気になるな。」
メイから聞いている勇者の運命を信じるとするなら、この街に何か事件が起こる可能性がある。
そう、カイトは考え調査を開始した。
「1人で悶々と考えるよりも何か身体を動かした方が気が紛れていい。もし何かあるなら嬢ちゃんを呼べばいいさ。」
街の中をざっと見て回った感じは怪しい場所は見つけられなかった。
「俺の思い違いだろうか。普通、スラムやら豪華な館には気になる点があるはずなんだがな。いや、怪しくないからおかしいのか?」
カイトの言う気になる点とは犯罪の痕跡のことである。
スラムにも館にも犯罪を行っている者特有の雰囲気があるのだ。
「もっと詳しく調べてみるか。でも、どちらを先に調べようか。」
カイトは考えた結果、近くにあったスラムを調べてみることにした。
勇者視点
「リーガルさんダメですよ。こんな昼間からお酒を飲むなんて。それにスラムに行くなんて」
「何言ってんだ。今日は休む日だ。なら、昼とか夜とか関係ないんだよ。スラムだからって食わず嫌いは行かんぞ。それに、マクエスとエイラはお前に甘いから俺も許されるかもなんてな。」
「あの2人は僕に変な事教えたってさらに怒りそうですけどね。」
「お前も女遊びくらい覚えておいた方がいいぞ。普通じゃさせてくれないプレイもさせてくれるからな。」
「ちょっと!何言ってるんですか!」
「ま、今から行く店は普通に酒を飲む店だから心配するな。」
「それでもダメですよ。」
「じゃあ、お前だけで帰るか?」
「え」
「方向音痴のお前が1人で帰れるものなら帰ってみるといい。」
「クッ!まんまと手のひらの上で踊らされていたとは…」
「フハハハ!という訳で行くぞ。」
「まさか、勇者とかち合うとはな。スラムで当たりか?運が良いのか悪いのか。というか、勇者パーティってもっとキッチリしてるんだと思ってた。」
2人はある建物の中に入っていった。
しばらく外で見張っていたが出てこないので、外から盗み見ると、
「お前、ダメダメって言ってた割にいい飲みっぷりじゃないか。」
「そりゃあ、僕だってストレスの1つや2つくらい溜まるんですよ。」
「ハッハッハ、そうだろうな。お前みたいな若者に重責を背負わせてるんだ。情けないったら仕方ない。」
「泣かないでくださいよ。僕は皆さんにとても感謝してるんですよ。それに…」
「なんだよ。」
「僕は皆さんの事が大好きですよ。」
「ユリエス!可愛いヤツだな!もしお前が……zzz」
「寝ちゃったんですか?ちょっとー」
「…まあ、人類の希望と言っても息抜きは必要か。うん、他を当たるとしようか。」




