296話 とっておきをプレゼント
「そこにいるのは誰だ!」
「おいおい、生き残りがいないか見に来たら人間がいるじゃないか。外には興味無いなんて言ってた癖に人間と繋がってたのかよ。潰しといて正解だったぜ。」
「お前らがこんなことをやったのか。どうしてだ!」
「あ?俺たちに協力しないとか言うからよ。ムカついて潰したんだよ。弱っちい癖に逆らうからこうなるんだよ。」
ギリッと歯を噛みしめる。
「なんだ、怒ってるのか。ハッハッハ!テメェとは関係ないだろうが。」
「コイツらはただココに住んでいたんだろうが、わざわざ襲う必要なんて無かっただろうが!」
「弱いから死んだ。ただそれだけだろう。ま、お前にも死んでもらうがな。」
「なんでこうなるんだ。」
「何被害者ぶってるんだ。先に手を出したのは人間だろう。」
「何だと?」
「わざわざ俺たちの領域に入ってきて殺し回ったのは人間だ。」
「だからって無関係なヤツらを襲うのは違うだろ!」
「議論するツモリはない。死ね。」
魔族の移動速度はカイトの反応速度よりも速く、カイトは当たる寸前に身体を反らすことしか出来なかった。
「ウグッ!」
「弱い、弱いねぇ。いや、人間からしたら強いのか?」
「クソ、やるじゃねえか。」
「せいぜい俺を楽しませてくれ。」
魔族はカイトよりも強く、体術だけでカイトは圧倒されてしまっていた。
「おいおい、もうちょっとなんとかならないのかよ。弱すぎてアクビが出るぜ。」
「今までのは準備運動だ。とっておきをプレゼントしてやる。炎剣«炎の吐息»」
「おっと」
「油断大敵だよな!」
「な!炎の中を突っ切っただと!チッ!」
「やっと一撃入れられたぜ。」
「ふざけるな!ただのカスリ傷だ。調子に乗るんじゃねえ!」
「怒るなよ。怒るから、お前は負けることになる。」
「何だと!ふざけた事を!」
「風剣«風撃»」
「風の魔法だと?2本も魔剣を持っているとはな。」
「どんどんいくぜ。混合魔剣術«火炎旋風»」
「これは、さすがにマズイか。暗黒術«死爪»」
「結構大技撃ったツモリなんだが、打ち消されるとはな。」
「貴様ごとき、本気を出すまでもないのだ!」
「いや、そろそろ終わりだ。」
「何を言っている…何だこれは…身体が痺れ…」
「周りを見てみろ。俺は風を使って煙をお前の周りに集めていたんだ。」
「そんなことで…!」
「たかが煙だと思うだろ。でも、火事で1番危険なのは火ではなく、煙なんだ。魔族も生物だ。呼吸をしなければ、死んじまう。だが、呼吸する時に煙を吸い込めば、自滅するって寸法だ。」
「俺は死ぬのか…こんな所で」
「そうだ。お前は俺に殺される。報いを受けることだ。」
「そう…か。」
魔族は呼吸困難で息を引き取った。
かなり苦しかったはずだが、死に顔は満足気に見えたのだった。




