30話 調査開始
「メイさん、この廊下の掃除やってもらえるかしら。」
「分かりました。」
「頼みましたよ。」
私は今、掃除をしている。
最初は納得いかなかったメイド見習いだが、王太子暗殺を手引きした犯人を見つけるのには好都合だと考え直した。
前回の王様との謁見や、パーティーで顔カレンバレているのではないかと聞くと。
「陛下との謁見の時は使用人はいなかったし、パーティーの時も人の顔を覚える余裕は無かったはずだ。つまり君の顔を知っている者はかなり怪しい。」
との事だった。
まぁ、問題無いと言うなら別に良いのだが。
黙々と掃除をしていると、声をかけられた。
「ねぇ、王太子殿下のこと諦めてくれない。」
「何のことでしょう?」
「シラを切るんだ。殿下の愛人の座は私が狙ってるの、あんたの出る幕じゃないわ。」
「私のような子供が殿下の愛人なんて狙いませんよ。第一、殿下が私を選ぶ理由がありません。今、殿下が私に良くしてくださるのは、私が幼い子供だからです。」
「そう、なら殿下のことを狙ってるのは私だと覚えておく事ね。」
そう言って彼女は歩いていった。
なんだあれ。王太子の愛人とか冗談じゃない。
こんな事もあるとは、面倒くさすぎる。
ふー、ようやく終わった。達成感。
「メイ嬢、頼まれていた物用意したよ。」
「ありがとうございます。」
「こんなものどうするんだい?」
「少し加工します。作業したいので殿下のお部屋に行きましょう。」
「?って袖をひっぱらないで!」
私が欲しいと言った物は屑魔石という物だ。
10個単位で売ってようやく1Gという値段しかつかないためこう呼ばれている。
私はこれを使って盗聴器の様な魔道具を作るつもりなのだ。
新人メイド見習いのおかげでどこにいても怪しまれない。
さて、これで思う存分怪しいやつら調査できる。
「そう言えばなんですけど。近衛騎士達は私のこと何か言ってましたか?」
「何も言ってこないが、不満があるのは間違いないな。」
「まぁ、そうでしょうね。私みたいな子供に何ができるんだって話ですよね。」
「妙に素直だな。」
「私はいつも素直ですよ。私みたいな子供雇うのやめません?時間とお金の無駄ですよ。」
「嫌だね。君と話してるだけでも楽しいし、手放す気は無いよ。
「そうですか、残念です。よし、出来た。」
「何作ってるんだい?」
「盗聴用の魔道具です。」
「君、魔道具作れるんだ。」
「まぁ、簡単な物なら。」
「ここで作らなくてもよかったんじゃない?」
「サボるなら殿下といた方が良いので。」
「ああ、そういう。それで何をするんだい?」
「もちろん、怪しい人の会話を盗聴します。」
「バレたら大変なことになるよ。」
「大丈夫です。誰も私が作ったなんて思いもしませんから。」
「確信犯か。」
フッフッフッ。さて、誰から調べようかな。