295話 獣人
カイト視点
「嬢ちゃん、聞こえるか?…通信機が使えないのか。色々と不便だな。魔力濃度が濃い。原因はなんだ?」
ブツブツとつぶやきながら探索をしていると、何かが探知の範囲に入った。
息を潜め、周りをうかがう。
「ただの魔物じゃないな。魔族か?」
ザッと藪をかき分け移動している音が聞こえ、少しづつ近づいて来るのが分かる。
カイトは自分の目の前を通った相手を羽交い締めにして捕まえる。
「大人しくしろ!」
「ヤメロ!離セ!」
ジタバタとすごい力出暴れるが、さらに力を込めて押さえつける。
縄で縛り付け、改めて相手の顔を見ると、
「私にナニをするツモリだ!」
「え、女!?あんなに力が強かったから男かと思ってた。」
「グルル」
「獣人か。この様子からして、敵対してない方みたいだな。…1つ質問だ。お前は人間を滅ぼしたいと思うか?」
「ナゼ私がそんなコトをしないとイケナイんだ?そんなコトよりも早く離セ!」
「なるほど、すまない。俺の勘違いだったようだ。今解放するよ。」
獣人の女は少しキツく縛ったので、縄の跡を擦りながら、聞いてくる。
「私はククルだ。オ前は?」
「俺はカイト。人間を殺そうとしている魔族を倒しに来た。」
「魔族を殺すノカ?」
「いや、少し敵意を持っている程度なら殺さない。人間を殺すための計画を立てている魔族だけだ。」
「そうか。コノ一帯は私達のナワバリだから、そんな魔族はいないと思うゾ。」
「そうなのか。ありがとう。もし、戦争をしようとする魔族が来ても協力しないで欲しい。その時は君たちも俺たちの敵になってしまう。」
「私達はソトに興味はナイ。勝手にオ前達が争っているダケだ。」
「そうだな。俺はもう行くよ。本当にすまなかったな。」
「戦士として私が未熟だったダケだ。気にしなくてイイ。」
カイトはメイと連絡をとるため、1度森を出た。
「嬢ちゃん聞こえるか?」
『感度良好。聞こえますよ。』
「良かった。壊れてたらどうしようかと思ってたんだ。そっちはどうだ?何かあったか?」
『いくつか放棄された拠点の跡を見つけました。魔族ではなく人間ですね。』
「天理教団か。追い詰められてここまで逃げてきたってわけか。」
『私は彼らを追いかけます。カイトの方はどうでしたか?』
「俺の方は魔族を集落を発見したよ。俺達には完全に無関心だったよ。」
『そうですか。なら、潰す必要は無さそうですね。』
「ああ、俺の方はこれくらいだ。」
『では、引き続き調査をお願いします。』
「了解だ。」
カイトが森に戻ると、黒煙が上がっていた。
「山火事か!?燃え広がる前に消さないと!」
燃え広がると魔物のエサが無くなり、人里まで降りてくるため、山火事は一大事なのだった。
カイトが火事現場に着くと、昨夜見つけた集落だった。
「誰がこんなこと…!」
周りを見ると、倒れている人の中に見覚えのある顔を見つけた。
「ククル!誰にやられたんだ!おい!しっかりしろ!何でだよ!チクショウ!!」
倒れ、ピクリとも動かない人々を見てカイトは慟哭したのだった。




