294話 迫害の歴史
目立たないように、夜を待っている間カイトからの質問に答えるメイ。
「行く前に質問。中層ってどんな感じ?」
「魔の森は表層、中層、深層の3つに分類されています。表層は緑の植物が生い茂った場所です。深層は魔力により赤く変色した植物が生い茂っています。中層はそれらが入り混ざった感じです。」
「なるほど。赤1色になったら深層なんだな。」
「はい。その奥に行くとドラゴンの群れがいるので、手を出さないように。」
「了解。んじゃ、行ってくるわ。」
カイトに北東部を任せ、メイは北西部を担当することにした。
北西部の表層は広く、いくつかの山を含んでいるためより広範囲を捜索できるメイの方が向いているためだ。
『北西部には勇者が来ておるぞ。』
「となると、また一悶着ありそうですね。」
『どうなる事やら。』
「今回は王国側が対策をしているようですよ。」
『そうなのか。』
「港湾都市のスタンピードの時、勇者を助けたのは使徒を名乗る怪しい人物だったらしいですから。これ以上メンツを潰されないようにするつもりなのでしょう。」
『自分で怪しいって言っちゃうんだ。』
「彼ら目線で見るならそうなるでしょう。」
『夜にも関わらず、多数の人間がおるようじゃのう。』
「あれがさっき言った対策ですよ。魔族がいてもあれだけ人数がいるので、勇者と接触する前に発見することができる。それを勇者のパーティメンバーが見ることで進路を帰るということですね。」
『死ぬ事が前提の部隊か。』
「そうです。下級魔族程度なら倒せるでしょうが。中級、上級の時魔族が出てきた場合、壊滅するでしょうね。」
『壮絶じゃのう。』
「上級魔族に勝てる人がいないんですよ。カイトやピーターでも無理ですから。」
『上級魔族が強すぎるという訳か。』
「そうです。カイト達も強くなっているんですけど、まだまだです。」
『中級魔族は?』
「ギリギリですね。数人で束になって戦えばあるいは…」
『思っていたよりも人類は危機なのでは?』
「そうですよ。薄氷の上に立っているようなものです。この付近は彼らがいるので別の場所に行きますよ。」
「この反応は…集落ですかね。」
『こんな場所にか?』
「多数の生命反応を確認しました。」
『敵対しておるのか?』
「おそらく敵対勢力ではないでしょう。普通に生活しているんでしょう。」
『すごい場所に住んでおるのう。』
「王国は人間の国です。その歴史は他種族の迫害ですから。大昔に迫害を受けたのでしょう。」
『となると、敵対はしないが味方になることも無さそうじゃのう。』
「さあ、どうでしょうね。そうだといいですけどね。」




