280話 いいキッカケ
あの後、迷子のピーターを回収し、街に帰還したメイは事情を説明するために、辺境伯領に来ていた。
「…事情は分かったよ。でも、前例を作るわけにはいかない。そうだろ?」
「その通りです。ですが、サキさんを処分するとカイトも使えなくなりますよ。」
「奴隷にしてしまった方が、御しやすいか。」
「当然2度目はありません。しかし、彼女が裏切ることは無いでしょう。」
「うーん、そうは言っても…」
「では、貸し1つでどうでしょう。元々、サキさんを引き入れたのは私ですからね。どうです、安いものでしょう。」
「もう一声」
「欲張りは嫌われますよ。」
「ダメか。…分かった。今回はそれで許そう。次は無いと、伝えておいてくれたまえ。」
「はい、それでは失礼しますね。」
「カレンちゃんにもよろしくね。」
「はぁ、最後までキリッとできないんですか。」
「小難しい話は終わったんだし、いいじゃないか。」
「まあ、カレンには伝えておきます。では、また」
瞬間移動で帰ってきたメイは甘ったるい空気を感じた。
「なんですか、これ」
周りを見渡すと、カイトとサキが少し気まずそうにしながら掃除をしていた。
「あ、メイ。あの2人なんかんじゃない?なんと言うか、付き合う直前のカップルみたいな?」
「ピンク色のオーラが見えるんですよね。あの2人に近づくと巻き込まれそうでイヤです。」
「そっとしておきましょうか。」
「それが得策だと思います。」
そうして、全員がそっと2人の側から離れていくのだった。
カイト視点
(すごい気まずい!どう接すればいいんだ!?俺たち半分とは言え血が繋がっている兄妹なんだぞ!?)
とモンモンと考えているカイト
自分の気持ちに嘘はないが、それが許されるのかと考えるとどうすればいいのか踏ん切りがつかなくなってしまっていた。
「…ト、…イト、カイト!」
「うおわ!な、なんだよ急に…」
「何度も呼びかけてたのに、返事しないのが悪いのよ。ここは終わったから次行くわよ。」
「お、おう」
「まったく、ちゃんとしてよね。」
「ス、スマン」
「ねえ、今日の仕事が終わったら話があるの。アンタの部屋に行くから待ってて暮れるかしら。」
「わ、分かった。ちなみにどんな話か聞いても…?」
「な、内緒よ!ほら、行くわよ!」
その日の夜
「カイト、いる?」
「ああ、いるぞ。」
「よかった。もしかしたら逃げちゃったかもって思ってたから。」
「に、逃げねえよ。」
「アンタ、私たちのことでずっと悩んでるでしょう。」
「そ、そうだな。」
「アンタは小難しく考えてるのかもしれないけど、それで考えが纏まらない時はそんなのやめて簡単に考えればいいのよ。」
「簡単にってそんな適当な…」
「例えば、兄は妹を守るものでしょ?だから、ずっと一緒にいて守るの。簡単でしょ?」
「そうは言ってもだな…」
「もう!うじうじと情けないわね!私と一緒にいたいの?いたくないの?ハッキリしなさい!」
「俺は…サキと一緒にいたい…でも、許されるのか?」
「私から離れるなんて許さいないわよ。それに、私の主人はアンタなんだから、離れるなんて無理な話よ。」
「はぁ、今回のはいいキッカケになったのかもしれないな。」
この2人のせいで砂糖を吐きそうになる人が大量に出たとか出ないとか




