279話 盗み聞き
「カイト…」
「サキ!無事だったのか!今行こうとしてたんだ。」
「え、鎖で縛られてたのに」
「あれくらい簡単に解けるさ。それで、今どうなってんだ?」
「メイさんが助けてくれたわ。」
「嬢ちゃんは?」
「魔法でアナを分離してどっか行っちゃった。」
「めちゃくちゃやってるな…」
「そうね…あんな助け方されるなんて思ってもなかったわ。」
「どうしたんだ?そんな顔して」
「ごめんなさい。こんなことになっちゃって。」
「もういいんだ。気にしないでくれ。」
「違うわ。事情がどうであれ私は裏切り者よ。どうなるか分からないわ。だから、今のうちに謝っておこうかと思ってね。」
「そんなこと言うんじゃない。俺が何とかするから」
「そんなのムリよ。カイトの負担になりたい訳じゃないのよ。」
「お前を諦めるなんて冗談じゃない。お前の告白に答えてなかったな。…俺もサキ、お前が好きだ。」
「フフ、顔が真っ赤じゃない。」
「わ、笑うんじゃねえよ。」
「カイト、もっと屈みなさいよ。」
「な、なんだよ…!」
サキはカイトの頬にキスをすると、カイトは一瞬呆けた後、勢いよく後ずさった。
「ななな!」
「そんなに驚かないでよ。それともイヤだった?」
「い、嫌じゃない…その、嬉しかったけど、いきなりで驚いただけだ。」
「これで満足ね…」
「イチャイチャしているところ申し訳ないですけど、いいですか」
「「きゃあああ!!」」
「うるさいですよ。」
「どどど、どこから聞いてたの!?」
「私は裏切り者よのところからですけど。」
「結構聞かれてるー!!」
「サキさんが始末されなくてもすむ方法が一つだけあるんですけど。聞いてみます?」
「何だそれは!」
「サキさんに契約を破れば死ぬ呪いをかけるんですよ。」
「それって奴隷じゃないか。」
「裏切り者には粛清を。これが裏のルールです。奴隷に落ちるだけならマシだと思いますけどね。」
「やるわ。生きられるなら奴隷でもなんでもやってやろうじゃない。」
「その意気ですよ。呪術«死の法則»」
「う…ちょっと気分悪くなってきたわ。」
「強力な呪いですから、数日は調子が悪くなるでしょう。主人はカイトにしときました。」
「俺なの?」
「サキさんの扱いを1番知っているのはカイトですから。契約内容は主人を裏切らないことです。辺境伯様には私が言っておきますから、安心してください。」
「アナはどうなったの?」
「アナとは話しをして分かり合いましたよ。ね?」
『ヒェッ』
「話の意味が違う気がするのは俺だけか?」
「アナはサキさんの1部らしいですけど、本当ですか?」
「ええ、本当よ。」
「なら、アナをサキさんと同化させましょう。2つの人格を1つにするので大変ですが、これが最善策だと思っています。」
「えっと、じゃあそれでお願いするわ。」
「任せてください。」
メイは力強く胸を叩いた。
その頃のピーターは、
「なんだこの建物、広すぎるだろ!」
迷子になっていた。