28話 暗殺
王太子が去っていった後、何人か挨拶に来たが、数回言葉を交わしただけで帰っていった。
王太子がいるし、そちらに行くのが当然だよな。
もしかしたら、王太子が声をかけてきたのは自分に注目を集め、私たちを守るためだったのかもしれない。
「お父様と話しているあの方は誰かしら?」
「太ったあの方ですか。カレン様あの方に近づいてはいけませんよ。辺境伯様がたぬきならあの方は、怪物です。近づいても利用されるだけです。」
一目見ただけで分かる。あいつは人を人と思わなかった、前世のクズどもと同じだと。
あんなやつを視界に入れているだけで吐き気がする。
辺境伯はよくあんなやつと話せるものだ。
ん?王太子に使用人が近づいて行っている。
ポケットの中を気にしている様子だ。
まさか。
ギラッ
やっぱり、暗器か!
「殿下!避けてください!」
火魔法«熱線»で武器を持った腕を狙った。
「ぐああ!」カラン
ナイフが落ちた。
「きゃあああ!」
王太子と話していた令嬢が悲鳴を上げ、注目が集まった。
衛兵が走って来て、男を捕らえたが、男は口から泡を吹いて死んだ。
事前に口の中に毒を仕込んでいたようだ。
別室に移動した後、
「メイ嬢、助けていただき感謝する。君は私の恩人だ。」
「いえ、当然のことをしたまでです。」
「メイ、何があったの?」
「その話はまた後で。」
「心当たりはありますか?」
「いや、ない。」
「王位を狙ったのでは?」
「マイラーズ公爵。」
そう言ってきたのは、辺境伯と話していたあの男だった。
「王位を狙ったというと、第二王子ですかな?」
「その可能性は低いかと。」
「何故そう言える?」
「王太子殿下が狙われて真っ先に疑われるのが第二王子殿下だからです。余程の馬鹿でない限り、こんなことやらないでしょう。」
「そうだな。弟は馬鹿でも衝動的でもないこんな事はしないと思う。」
「そうですか。それでは誰がこんな事をやったのか調べなければなりませんな。」
もし、あれ以上王族に罪を被せようとするなら公爵が犯人でほぼ確定だったかもしれないのに。
この騒動のせいで、パーティーは解散になった。
私や他の関係者が集められた場所で辺境伯がこう言った。
「メイくん。君が王太子殿下の護衛を引き受けてみるのはどうかな?」
「辺境伯様何を仰られているのですか?そんなことできる訳…」
「メイ嬢が護衛してくれるのか、さっきも気づいたのは彼女だったし、君が良ければお願いしたい。」
「殿下を護衛する騎士団の方もいるのでは?」
「普段は問題無いのだが、先程のように、パーティーなど無防備になるときも多い、そういうときも君なら側にいることができるだろう。」
「どうかなメイくん。」
「え、えぇ…。」
どうしてこうなるんだ。