278話 羞恥心
サキがカイトと別れの言葉を交わしている頃、メイ達は
「あれ?ここら辺なんですけどね…」
「発信機持たせてたんじゃないのか?」
「試作品だと言ったじゃないですか。位置の絞り込みに時間がかかるんですよ。」
「そう言って何日目だよ。」
「あれー?」
「おーい、話聞いてるー?」
「これやっぱり地下なんですかね。」
「ここに何も無いならそうなんじゃないの。」
「ブチ抜きますか。ヨイッショっと」
「その掛け声で岩盤抜けるのなんか納得いかないな。」
地面を崩落させ、地下に降り立つ2人
「ほー、ホントに変な施設があるんだなー。」
「さて、世話の焼ける2人を回収しに行きましょうか。」
「そうだな。いや、やっぱり俺はここに残るよ。メイさんは先に行っててくれ。」
洞窟が崩落した音を聞きつけた敵がぞろぞろと集まって来ていた。
「頼みましたよ。」
「ああ、ここは俺に任せて先に行けってか。」
「変なフラグ立てないでもらえます。まあ、死ななければ治しますから、そこは気をつけてくださいね。」
そう言って走り去るメイを見送り、敵に向き直る。
「来いよ。今回の俺は前回のようにはいかないぜ。」
施設の奥に向かって走っていくメイ。
「思ったよりも早かったわね。」
「サキさん。どういうつもりなのか、教えてもらえますか。」
「どうもこうも無いわ。やっと、自由になったのに、邪魔しないで!」
「あなたが誰かは知りませんが、まだ完全に身体の主導権を握っている訳ではないようですね。」
「だったらなに?私を殺せばサキも死ぬわ。アンタにできる事なんて何も無いのよ!」
「サキさんは大事なことを1つ秘密にしていてくれたようですね。」
「そんなハズはないわ!サキの記憶は全て読んであるもの!」
「いいえ。サキさんは知っていてあなたが知らないことが1つだけあります。魂魄魔法«精神分離»」
『な!何をしたの!?』
「あなたの精神を分離させたんですよ。」
『身体が無くなっている…そんなバカなことが!』
「サキさんは私が魂を操作できることを知っていたのに、あなたはそれを知らなかった。それはあなたがすべてを掌握していない証拠です。」
『どうして邪魔するの!?お前さえいなければ!』
「本当にそうだと思っているならあなたは愚かですね。」
『どういうことよ』
「カイトが黙っている訳がないでしょうに。」
「ん…ここは…」
「サキさん、起きましたか。」
「あれ?なんで?」
「サキさんの身体を乗っ取っていた存在はここです。」
『ふざけんじゃないわよ!その身体は私のモノよ!返しなさいよ!』
「アナ…」
「カイトはこっちですか?」
「え、そうだけど…」
「サキさんはカイトとキチンと話してください。アナでしたか?あなたは私と話しましょう。」
『アンタなんかと話すことなんか無いわよ!』
「…あんなこと言っちゃったから気まずいんだけど…っていないし。どうするのよ!」
羞恥心でどうにかなりそうになりながらカイトの元を目指すサキだった。