277話 告白
カイトが連れ去られてから数日が経ったが、基本放置だった。
(拷問でもされるのかと思ってたが、そういうのも無し。あるとすればメシ時にアナがメシを持って来るくらいか。というかこの部屋はなんなんだ?鎖が届かないところにベッドが置いてあったり、食器も2人分ある。なんと言うか、ペットってこういう視点なのかって感じだな。)
カイトがつらつらと考えていると、コツコツと足音が響き、扉の前で足を止めた。
「…カイト」
「まさか…サキか?」
「うん…カイト、ごめんなさい。こんなことになっちゃって。みんな私のせいだわ。」
「違う!お前が苦しんでいる時に気づいてやれなかった俺の責任でもある。」
「そうじゃないの。アナは私の負の感情だけで構成されているわ。だから、私の一部であることに間違いは無いわ。でも、私の願望、欲望と言い換えてもいいわ。それを歪んだ形で叶えようとするの。ちょうど今みたいにね。」
「今?何の願望を叶えようとしているんだ?」
「…もう時間みたい。もう私が外に出ることは無いと思うから言っておくわ。」
「やめろ…」
「カイト、この世界に来る前からあなたが好きだったわ。」
「やめろ!そんな別れの言葉聞きたくない!」
「さようなら」
「ふざけんじゃねぇ!こんな別れなんて許さねえ!お前を絶対に連れ戻してやるからな!」
「ごめんなさい…カイト」
『フフフ、久しぶりの2人きりの時間、楽しめたかしら。』
「楽しめる訳ないじゃない。」
『そう、それじゃあ私の中で見ているといいわ。』
「カイトには手を出さないでよね。」
『分かっているわ。あなたの大切な人は私にとっても大切なのよ。』
「どうだか」
『それじゃあね。』
その瞬間、サキの纏う雰囲気が変わった。
身体の主導権がサキからアナに変わったのだ。
「フフフ…アハハハ!やっと、自分の身体を手に入れたわ。目障りなサキは封じ込めた、これで邪魔も入らない。」
「クヒヒ、おめでとう」
「あら、いたの。気づかなかったわ。」
「クヒヒ、とても面白いものが見れそうだったからね。少し遅かったみたいだけど。ああ、それとヤツらが近くに来てるみたいだよ。」
「そう」
「たくさん連れて来たから証拠を消す時間くらいは稼げるんじゃないかな。クヒヒ」
「あなたは戦わないの?」
「まだ、あのバケモノには敵わない。必ず殺す。でも今じゃない。そういうことで、僕は帰るよ。クヒヒ」
「ええ、私も適当に切り上げるわ。」