272話 チンピラ
「衛兵団も結構行き詰まってるみたいだ。」
「なんとかしたいですけど、私たちにも情報がありませんからね。」
「この前、偽情報をばらまいた手法は使えないのか?」
「そう何度も使える手はありませんし、どれくらいで相手に届くか分かりませんから、オススメはしません。」
「罠を張っていると分かるような情報を流して活動を制限するってのはどうだ?」
「ふむ、他にいい案も出そうにありませんし、やってみましょうか。」
「これで釣れたら儲けモンだ。」
警備が薄いという情報の中にワザと内部の情報を入れ、罠だと誤認させる手法をとった。
「後はこれを流すだけだな。早く行こう。」
スラム街に行くと、いつものすえた臭いといつもとは違う血の臭いが漂ってきた。
「この臭いは、血か!」
「こっちです。」
2人が急いで臭いの出どころに向かうと、5人ほどの人間が倒れていた。
「なぜこのようなことに?」
「た、助けてくれ!」
「あっちから叫び声が聞こえるぞ!」
助けを求める声の元へ向かうと、数人の男が1人のホームレスを取り囲んでいた。
「何をやっているんだ!」
「あ?テメェらには関係ねえだろう。引っ込んでろ!」
「関係ないかどうかはお前らが決めることじゃねえ。それに、ここで退いたら胸糞悪いだろうが。」
「じゃあ、お前から先に死ね。」
男たちがカイトに殺到しようとした時、メイがカイトの前に立った。
「こんなチンピラ風情に好き勝手されるとは、屈辱以外の何物でもないですね。こんなバカげたことを指示した黒幕を教えてもらいますよ。」
「邪魔だ!ガキ!」
メイはノーモーションで氷を出現させ、チンピラ達を凍りづけにした。
「な、なんだよこれ!こんなの聞いてないぞ!」
「どのようなことを聞いていたのか、教えてくれますか?」
「わ、分かったから、これを解いてくれないか?寒くて敵わないぜ。」
「それはあなたの態度次第です。」
チンピラは我先に知っている内容を話し、メイに魔法を解いてもらおうとした。
「なるほど、平民街にいたら良いこづかい稼ぎがあると教えられたと?」
「そうだ、スラムの住人を殺せば、金をやるって言われたんだ。」
「それでなにもしていないスラムの住人を襲ったと。」
「スラムの住人がいくら死んでも誰も困らないだろ!俺たちはスラムなんていうゴミを掃除したんだ。感謝してほしいくらいだ!」
「そうですか。話は分かりました。…後は任せましたよ。」
「ああ、後処理は組に任せときな。」
「な!ソイツら誰だよ!は、話が違うじゃないか!助けてくれるって!」
「魔法を解くとは言いましたが、助けるなんて言った覚えはありません。面白半分で人を殺したんです。それ相応の報いを受けるべきでは?」
「い、イヤだ!死にたくない!」
「彼らもそう思っていたでしょうね。」
「何か分かったのか。」
「タダのチンピラでしたが、お金を受け取る場所を聞き出しました。そこに行きましょう。」
「そうだな。ウチの縄張りで好き勝手しやがって、必ず潰す。」