270話 お芝居
「なあ、ホントにやるのか?」
「今さら文句を言わない。サッサとやる。」
「文句言わせなかったの嬢ちゃんだよな?」
衛兵団団長視点
俺はいつものように仕事をしていた。
最近、薬物を使用しているという報告が多く、処理する事柄も多い。
やはり、最近この街で勢力を拡げているというあの組織の仕業なのだろうか。
そんな風に考えていると、突然後ろから首にナイフを突きつけられた。
「よう、団長さん。最近、俺たちの稼ぎの邪魔をしようとしているみたいじゃないか。捜査をやめてくれよ。」
「貴様!何者だ。」
「聞かなくても分かってるだろ?要求呑まないのであれば、お前の家族を殺す。できないと思っているなら、大間違いだ。」
「な!わ、分かった。言う通りにするから、家族には手を出さないでくれ!」
「いい判断だ。そんな団長にはこれをあげよう。お近づきの印だ。」
そう言うと男は錠剤の入った袋を置いた。
「じゃあな。約束は守ってくれよ。」
男は窓ガラスを突き破って外に飛び出した。
賊が兵舎に侵入したのだ。
当然、兵士達はその男を必ず捕まえようと、殺到した。
そのまま、男と兵士達は走ってどこかに去っていった。
「俺はこれを魔法士のところに持って行くか。」
カイト視点
今俺は大量の兵士に追いかけられている。
それもこれも嬢ちゃんの作戦のせいだ。
俺を敵組織の一員だと誤認させて、徹底的に調べさせるつもりらしい。
裏からの情報だと衛兵団はどの地域で多く取引されているのかすら把握できていなかったらしい。
そこで、よく取引がされているスラム街の第3地区に兵士共を引き連れて来たという訳。
第3地区は組とか名乗ってるあの組織の支配が遅れている場所だ。
だからこそ、ここが狙われたんだろうが。
さて、そろそろあるはずなんだが。
あった、嬢ちゃんのワープホール。
これは屋敷まで繋がってるらしいから怪しまれるということは絶対に無いらしい。
便利でいいね。
衛兵団団長視点
「何!逃がしただと!?あんなにたくさんいたのに逃げられたと言うのか!」
「はい、忽然と姿を消してしまいまして…」
「言い訳はいい!隅々まで探せ!絶対に逃がすな!」
「脅迫されたのではないのですか?」
「あの時は油断させるために、屈したフリをしたが、俺の家族はこの街にはいない。こんなことがあろうと、王都に住まわせていたのだ。」
「そうだったんですか。」
それから少し経って、衛兵団は次々と薬物の在庫を押さえ、色々な情報を手に入れることができたのだった。