265話 驚愕の初遭遇
ニコラス視点
「ダニエル、遅かったじゃないか。」
「スマンスマン、学園長に捕まってたんだ。」
「まったく、この時期は忙しいと言うのに。」
研究室を訪れたダニエルを中に招き入れ、応接用のソファに座らせる。
「それで、メイのヤツはキチンとやっているか?」
「今回はその事で来たのか。そうか、そろそろ成績を付けなければいけない時期だったね。」
「そうなんだよ。テストの点数はともかく、出席日数が怪しいから、聞いて回らないといけなくてね。」
「それは大変だな。メイくんは研究室にキチンと顔を出しているよ。とりあえず、出席に関しては全て出ていることにしておこうかと思ってるよ。」
「そうか。分かった。補習に付き合うなんて面倒なことは避けたかったから、一安心だ。」
「キミは変わらないね。」
「俺は上品なお貴族様とは違うからな。」
「お茶をどうゾ」
「お、ありがとう…ドゥエエェェ!」
「どうかしましたカ?」
「な、なんでメイがここにいるんだ!?」
「ワタシはマスターではありませんヨ?」
「マ、マスター?どういうことだ!ニコラス!」
「実はだね…」
「なるほど、つまりこの子はアイツをモデルに造られたゴーレムで、データ収集も兼ねて貸し出されていると…めんどうな作業をやってくれるなら俺も欲しいな。」
「そういうワケだ。メイくん曰く、常時稼働しているドールはナナだけで、それ以外はメイくんの工房に保管されているらしいので、頼めば貸してくれるかもしれないよ。」
「フーム、見れば見るほど人間にしか見えないが、メイの話し方とはまったく違うし、アイツには他に兄弟はいなかったはずだから、双子ということでもない。後は、幻覚とか?でも魔法が使われている形跡も無いし、ホントにゴーレムなんだな?」
「だからそうだと言っているでしょう。あと、ナナが困っているので少し離れてください。」
「それはスマン。それにしてもこんなの造れるなんて、アイツなんでこの学園にいるんだ?」
「メイくんは専門家の意見が聞きたいと言っていてたんだが、心当たりはあるか?」
「ゴーレムの専門家か?そんな酔狂な専門家いる訳ないだろ。」
「ある程度の知識があれば素人意見でも良いらしいが…」
「コイツを学会で発表すればいいんじゃないか?」
「論文を書く時間が無いと言っていたよ。」
「確かに、こんなにも人間に近いゴーレムを造ったとなると、ビッシリと字で紙を埋めつくしても何十枚も必要そうだな。」
「そこに表や図を載せるとなると、一体何枚の紙が必要になるのやらということだ。」
「これがあればアイツそもそも出席自体免除されるんじゃね?」
「その事を僕も思ったんだが、そもそも中等部の生徒が発表する場所が無いんだよ。」
「確かに、期末にレポートを提出しろっていうのはあるけど、あれじゃあ正当に評価されないか。」
「どうしようか。」
「フーム、悩みどころだ。」
メイよりも大人たちの方が頭を悩ませていることをメイは知る由もなかった。