260話 足手まとい
王都でメイが奔走している頃、帝国では
「何?部隊が全滅しただと?」
「は、はい。直前に撤退した小隊以外は一切の連絡が取れません。」
男が跪いて報告している。
「無能共が、10人に満たない集団を襲うことすら出来んのか!お前がこの作戦を提案したんだ。どうするつもりだ?」
「どうかもう一度、挽回の機会をお与えください。」
「もう1つの計画はどうなっている。」
もう1人男が跪き、報告する。
「は、順調に進行しているとの事です。」
「そうか、貴様らは現地に行き対応しろ。」
「御意に」
「チャンスをいただけるとは、ありがたき幸せ。」
「足手まとい共が手柄欲しさに来るみたいだよ。」
「は?アイツら人の話聞かねえからいらねえんだけど。」
「頑固すぎて話通じないよね。見てる分には面白いんだけど。」
「ヤツらが来る前に計画をある程度終わらせる。少し前倒しするぞ。」
「分かった。」
メイ視点
「グオオ!」
「邪魔」
グールを聖気を込めた剣で斬ると身体がボロボロと崩れていく。
「分かってはいましたが、これは治せませんね。」
「アアァァ」
「次から次へと…これどこかから死体を持ってきていますね。こうしてはいられません。早く城に行かないと」
城に着くと、門が開け放たれていた。
「ふむ、急いでいたんでしょうね。」
「オオォ」
「中にもグールがいるんですか。危ないですね。」
城の扉を開け、中に入ると、剣を突きつけられた。
「お前、犯人の一味か!要求を伝えに来たんだろう!」
「違いますよ。犯人ではありません。」
「嘘だ!あの霧の中を民間人が歩ける訳ない!」
「いや、そんなこと言われても…」
「メイくん!帰ってきていたのか!」
「辺境伯様、お久しぶりです。」
「閣下、お知り合いなのですか?」
「ああ、私の娘の護衛のメイくんだ。」
「そ、そうでしたか。その、すまなかった。」
兵士は申し訳そうにしつつもホッとした様子だった。
「何があったのか、聞かせてもらえますか。」
「いいよ、と言っても私にも何が何だか分からなくてね。外はどうなっているのか、情報が入ってこない。情報が無ければどうしようもない。少し色々聞きたいから、向こうに行こうか。」
「分かりました。」
辺境伯に連れられて部屋に入ると、王太子がいた。
2人に外の様子を話すことになった。
「外にはグールがウジャウジャいるのかい?」
「はい。恐らく、違う場所からも死体を持ってきていると思います。聞いた話と死人の数が違いすぎますからね。」
「それは誰に聞いたんだい?」
「外の地下室にいたゴロツキ共からですよ。」
「彼らも生きていたのか。良かった。」
「カレンちゃんはどこにいるんだ?」
「王都の外に待機させています。王子も一緒なので問題ありません。」
「親子の感動の再会はもう少し後になりそうだね。」
「兄弟の再会もか。」
「殿下って感動するんですか?」
「かなり酷いこと言ってるね。しかし、首謀者が分からないことにはどうしようもない。このままでは食料が無くなって飢え死にだよ。」
その時、
「殿下!グール共の大群がこちらに向かっています!」
「何?なぜ今なんだ。」