257話 ヌシ
翌日、出発の準備をしていると、
「さて、変な魔物に襲われる前に移動するとしよう。」
「準備できました。」
「よし、出発するぞ。」
街道を急ぎながら進んでいると、山賊が出てきたが、
「有り金ぜんb…」
「早く行きましょうか。」
「最後まで言わせてあげようよ…」
メイに瞬殺された。
それを何度か繰り返したころ、巨大な魔物が道を塞いだ。
「あの魔物は、他の魔物を従えているのか?」
「ということは領域のヌシか。」
「領域のヌシってなんでしたっけ?」
「領域のヌシは周辺の地域の環境を維持している魔物の事よ。だから、その地域に住んでいる人や魔物は領域のヌシを襲わないの。」
「なるほど、つまり殺さずに追い返せばいいんですね。」
「そういうこと。」
「ちなみに殺すとどうなるんですか?」
「環境が変わるから住んでる動物も変わって、ここに住んでる人が困るわ。」
「それなら殺さない方がいいんですね。とりあえず、突っ込むので援護してください。」
「分かったわ。」
メイが突っ込んでいくと、取り巻きの魔物がメイに襲いかかるが、巨大な斧で叩き潰して強引に道を切り開いていく。
「火魔法«スパークブラインド»」
領域のヌシに目眩しの魔法を使い、その一瞬を利用して、斧の横側で思い切り殴りつける。
「グオオアアァァ!!」
ヌシの悲鳴が響き、思わぬ攻撃にヌシは後ずさる。
メイは魔力を放出し、相手を威圧する。
「これで実力差は分かったはずです。去りなさい。」
「クオォ」
短い鳴き声を残して、ヌシは去っていった。
「ふー、何とかなりましたね。」
「あのヌシ、殴られたところちょっと膨らんでたわよ。痛そう。」
「話の分かるタイプで助かりましたよ。」
「ご苦労。もう少し行ったところで休憩をとろう。特に君は大活躍しているからね。」
「これが仕事ですから。」
休憩しているとメイ達以外の全員が王子に呼ばれた。
「君たちを呼んだのは共有するべき案件だと思ったからだが、何度も出てきた山賊は帝国軍の小隊だったようだ。」
「なぜ帝国軍が?」
「俺を山賊から助け出したと恩を売るつもりか、俺を殺すつもりか、どちらにしろろくなものじゃない。」
「寝込みを襲ってくることもありえますかね?」
「当然、隙があれば踏み込んで来るだろう。」
「まだ半分以上あるのに…」
「それはそうと、本当にあの2人は何者なんでしょうか?」
「ヌシや取り巻きが逃げ出すほどの威圧だもんな。」
「あの力の強さは本当にドワーフなんでしょうか?」
「あれは魔法だ。気付かれないようにしているだけだ。」
「我々が見抜けないとは…」
「あれほどとなると兄上でも制御しきれないだろう。」
「王太子もですか?」
「あの威圧を見ただろう。精鋭であればあるほど、恐怖を植え付けられる。勝ち目が無いとな。まったく兄上はなんてヤツらを送ってきたんだ。」