255話 合流
「ここが第二王子の住んでいる建物ですね。」
「大きいわね。」
「まあ、王子ですから。殿下からもらったこの短剣を見せればいいらしいですから、早く行きましょう。」
呼び鈴を鳴らし、少し待つと、中から鎧を来た男性が現れた。
「何かご用でしょうか?」
「私たちは王太子様から命を受け、派遣されてきました。王子にお目通りをお願いしたいのですが」
短剣を差し出しながら、目的を伝える。
「君たちが?まだ子どもじゃないのか?」
「私たちはドワーフなのですよ。それに、女性に年齢の話は紳士的だとは言えませんよ。」
「す、すまない。主に確認してきます。どうぞ、こちらへ」
応接室のような部屋に案内された。
少しすると何人かの男性が入ってきた。
「君たちが兄上が寄越した護衛か、たった2人だけなのか?」
「はい、殿下は私たち2人で十分だとお考えになったのでしょう。」
「あの変人とどういう関係かは知らないが、護衛として来たのならば、ちゃんと働いてもらうぞ。」
「なんなりとお申し付けください。」
「王子、本当に信用するのですか?」
「彼女のもっていた短剣は兄上の物だった、使い物になるかは分からなくとも、裏切らることはないだろう。」
聞こえてないと思ってるかもしれないけど、聞こえてるよ?
まあ、突然来た2人組に対する反応としてはマシな方か…
「君たちが来るまでに出発の準備は終わっている。君たちも準備は終わっているね?」
「はい、準備は整っております。」
「では、出発だ。」
王子や私たちも含め、一行は8人で、2台の馬車と4頭の馬に乗った。小規模な商隊に偽装しているらしい。王子は馬車に乗り、もう1つの馬車には食料などが満載になっていた。
3人の騎士と私が馬を操り、使用人が馬車を操作した。
カレンは私の後ろに乗っている。
「乗り心地はどうですか?」
「どんな物でも、快適だと思えるような経験をしているから、とっても快適よ。」
「皮肉を言うようになりましたね。誰に似たんだか」
「少なからずメイの影響は受けてると思うわよ。ずっと一緒にいるんだから。」
「私はもっと素直ですよ。」
「どこがよ。素直な子はお父様と腹の探り合いなんてしないのよ。」
「人聞きの悪いこと言いますね。少しじゃれてただけですよ。」
「あれが?すごい火花散ってたように見えたけど。」
「あんなのお遊び程度ですよ。そろそろ帝国に入るはずです。気をつけてくださいね。」
「分かったわ。」
帝国に入って少ししてから日が暮れてきたので、野宿をすることになった。
「何かおかしいな。」
「何がですか?」
「通行人と1度もすれ違っていない。それに、魔物の気配もない。ここは帝国の中でも一位二位を争う幹線道路だぞ?次の街では情報収集しなければいけないようだな。」
朝日が登ってから出発し、昼前には村に着くことができた。
村の人に話を聞くと、
「実は、数日前とても素早い魔物がいたんですって。」
「魔物?誰か襲われたんですか?」
「いや、それが誰も襲われなかったらしいんだけどね、すごいスピードで移動してたって話だよ。聞いたところによると、何かを脇に抱えていたらしいから、誰か犠牲になったのかもってことらしいよ。」
「なるほど、ありがとう、奥さま。次は冒険者に話を聞いてみよう。」
「その魔物、通称ラピッド言われてるらしいんだが、移動してる時に威圧してたらしくってな、ただの通行人には効かねえが、魔物なんかにはすごく効いてたらしい。そのせいで、ここらの魔物は逃げちまって、商売上がったりだぜ。」
「ねえ、メイ…猛スピードで移動して、何かを脇に抱えてて、威圧もしていた人なんて、私最近見た覚えあるわ。」
「…そ、そうですね。」
やべ、完全に私のことじゃないか…