253話 旅の準備
カレンに殿下から頼まれた件について話してみると二つ返事で飛びついてきた。
「当然行くに決まってるじゃない!」
「そうですか。それなら色々準備しないといけませんね。」
「何を準備すればいいのかしら?」
「まず、派遣されるのは私たちだけなので、顔を隠す物、後は普通の旅の準備でいいと思いますけど」
「それなら、保存食でしょ、水筒でしょ、毛布や、薬なんかもいるかしら?」
「そうですね。設定も考えておいた方がいいかもしれませんね。」
「設定?」
「はい、私たちは殿下に恩があるから殿下の頼みで迎えに来たとか、身体が小柄なのは…ドワーフだからとかですかね?」
「姉妹という設定も付け加えましょう。私がお姉ちゃんね。」
「えっと、はい。」
「もう、ノリが悪いわね。じゃあ、これからいる物を買いに行きましょうか。」
「そうですね。」
ピーターに相談して連れてこられたのは、ギルドに併設されている店だった。
「ここには冒険者に必要な物はなんでもそろってる。街で買った方が安いのもあるが、1番手っ取り早いんだ。んで、初心者に1番オススメなのがこれだな。冒険者パックって言ってリュックの中に必要な物が入ってるんだ。男性向けだから女の子が使うとどうなるのかは分からないけど。」
「なるほど、便利なものがあるんですね。」
「ああ、これを使っていらないものや、欲しいものを考えていくって感じだな。だから初心者用なんだ。」
「いいですね。これ2つ買います。後は、このローブも2つ買っておきましょうか。ドワーフは力が強いんでしたよね?」
「ああそうだな。」
「では、鍛冶屋に行きましょうか。いつも使っている武器とは変えたいので。」
「ここがこの街の鍛冶屋なのね。縁がなくて来たことなかったわ。」
「私もですね。」
「メイさんみたいな不壊の魔剣を持っていない限り、鍛冶屋にはお世話になりっぱなしだからね。街に着いたらすぐに鍛冶屋の場所を確認するんだ。」
「なるほど、では入りましょうか。」
「おーい、おやっさん。いるか?」
「ん?なんだ、お前さんか、今日はどうした?」
「今日は俺じゃなくて、この女の子が用あるんだ。」
「そうか、お嬢ちゃん何が欲しいんだ?」
「両刃の斧をください。」
「斧だと?そんなものを使いこなせるとは思えん。ホントにそれでいいのか?」
「はい。それでお願いします。」
「分かった。斧はデカいから奥にしまってあるんだ。持ってくるからちょっと待ってろ。」
店主はのそのそと店の奥に入っていった。
「持ってきたぞ。これがウチにある戦斧だ。」
5つほどの斧を持ってきた店主はそれを乱暴に置いた。
「ふー、重い。腰にくるわい。それで、お嬢ちゃんの目当ての物はあったか?」
「これとかいいですね。」
その中にあった1番大きな斧を持ち上げ、どこかで試せないかと聞く。
「…よく持ち上げられたな。試したいなら、ウチの庭にスペースがあるからそこでやるといい。」
庭で斧を振るうと、風がゴウと唸り、的は砕けた。
「片手で振り回しとるやん。」
「メイさんってホント、見た目からは想像もつかないことするよなー。」
「すごいわメイ!」
「イイですね。これ買います。」
「ま、毎度あり…」
「とりあえず、準備は整いましたね。後は足りない物を買い足していきましょうか。」
「そうね。出発は明日でいいのかしら?」
「はい。今日はゆっくり休みましょう。」
こうしてメイとカレンは西の都市国家郡に向かって出発したのだった。