252話 王太子の頼み事
ピーターは今まで通り冒険者として活動する傍ら、気になることがあれば私たちに報告するということをしていた。
カイトは今まで以上に忙しくしていて、屋敷で姿を見ることはほとんど無かった。
私?私は情報収集なんてしても子どもが遊んでるとしか思われないからやること無くて学園にいるよ。
「なぜ私は補習なんて受けているんですかね。」
「お前がサボるからだな。出席日数ヤバイからな?」
「ちょうど進級できるくらいで休んでるのに、そんなわけないじゃんないですか。」
「お前さ、バカなんじゃないの?」
「バカと言った方がバカなんですよ。」
「ガキか!」
「ガキですが、何か?」
「このクソガキが〜!」
「あ、終わりましたよ。」
「ハイハイ…なんで授業聞いてないのに、これだけできるんだよ。」
「私が天才だからですかね。」
「黙ってろ。」
ようやく、補習が終わり、道を歩いていると、路地裏から声をかけられた。
「メイ様、我が主から伝言を預かっております。」
「殿下からですか。人を遣わすなんて初めてのことですが、何かあったのですか?」
「この中を見れば分かるとおっしゃっておられました。」
その人物は封筒を渡すと去っていった。
「ふむ、殿下の遣いというのは嘘ではなさそうですね。」
屋敷に戻り、その封筒を開いてみると、宝珠のような物が入っていた。
「これは、通信用の魔道具ですかね?」
『正解だよ!』
「うわ!」
『やあ、メイ嬢。初めて人を遣ったから驚いているかもしれないね。人手がなかったというのもあるし、少し私の個人的な要望も入ってるからね。いつも使っている連絡網を使うのは少し躊躇われたんだ。』
「急に大声出すのやめてくださいよ。それで、何かあったんですか?」
『実はね。弟が帰国することになったんだ。』
「弟と言うと、第二王子ですか?」
『そう、西の都市国家郡に留学してたんだ。それで、王国に帰ってくるには帝国を通らないといけないんだけど、最近帝国はきな臭いだろ?兄として心配なんだ。君が迎えに行ってあげてくれないか?』
「私の最も優先すべき仕事はカレンの護衛ですよ?あまり長い間離れることはできません。」
『なら話は簡単だ。カレン嬢も連れて行くといい。聞いたぞ?カレン嬢に次の仕事は自分を連れていけと言われたらしいじゃないか。この仕事は私の弟を連れ帰ってくるだけだ。君がやっている他の仕事と比べてもかなり安全だと思うがね。』
「しかし…」
『頼むよ。アイツは私の言うことを聞くようなヤツじゃないんだ。もう少し待てと言っても絶対に聞かないだ。』
「はあ、分かりましたよ。行けばいいんでしょう。」
『ありがとう!学園長には私から話を通しておくから、心配しなくていいぞ!』
こうして、メイは王太子からの頼みを聞くことになった。