237話 脈動する物体
「師匠、昨日アンとミナとフラスと一緒に依頼を受けてたんだけど、変な物見つけたんだ。」
「変な物?」
「そう、ドクドクって脈打ってて、地面にへばりついてる感じでさ、気持ち悪くてその場から離れたんだけど、なんだったのか知りたいし、今日ついて来てくれないか?」
「いいですよ。」
放課後になり、
「やはり、避けられているような気がしますね。」
「まだ言ってたのかよ。」
「絶対クレソンと模擬戦したからですよ。どうしてくれるんですか。」
「ごめんて、でもあの時は師匠も了承してたじゃないか。」
「まあ、そうですけど。」
「来年クラスが上がれば避けられなくなるさ。」
「俺たちは他の人から見たら、恐ろしいと感じるほどの力の差があるからね。俺やクレソンが怖がられないのはコミュニケーションをとっているからさ。師匠はそういうやってないだろ?」
「なるほど、そういうのも必要なんですね。」
「クレソンはそういうこと考えてやってる訳じゃないと思うけど。少ないとも俺は考えてやってるよ。」
「俺をサラッと下げるやめろ。」
「何でもいいから早く行こうよ。日が暮れたら見つからなくなっちゃうよ。」
「そうですね。行きましょうか。」
森に入ると、
「生物の気配がしませんね。」
「昨日はそこら中からしてたのに、夜のうちに何があったの?」
「とにかく、昨日見つけた物体を見に行こう。もしかしたらあれが原因かもしれない。」
「そうだな。こっちだ。」
森の奥にさらに分け入っていくと、
「あった!これだ。ちょっと萎んでる?」
「これは、卵嚢ですね。」
「卵嚢ってなに?」
「カマキリの卵のように卵の周りを覆っている皮膜のようなものです。これが破れているということは、中の生物が大量に出てきたということでしょう。」
その時、何かが高速で近づいてくることを察知したメイは剣を抜き、カウンターの要領で斬り裂いた。
「うわ!ってこの生物は…何これ、私見た事ないよ。」
「これは、まさか…」
「コイツの名前はブレードマンティス。目で追えないほどの速度で飛来し、すべてを切り刻む、カマキリ型の魔物です。」
「それの幼体がこの森に大量にいるって言うの!?大変じゃない!」
「アナタたちであれば、倒すことは出来なくても、避けることは出来るはずです。私が先頭を行きますから、フラスとクレソンは後ろを、アンとミナが真ん中にいてください。」
「この中で最も危険なのが魔法士である私たちということですね。」
「はい、2人は魔法士の中では動ける方でも本職とは比べ物になりませんから。とりあえず、この死体を持ってさっさと出ましょう。」
「待ってください。この死体の匂いに釣られて街にブレードマンティスが来たら大変です。私たちが魔法で匂いを漏らさないようにします。」
「確かに、その方が良さそうです。お願いします。」
慎重に、そして素早く動き、森の外に出た。
途中で3体のカマキリと遭遇したが、無傷で倒すことができた。
冒険者ギルドに入ると、中は負傷者でいっぱいだった。
カウンターに行き、話しかける。
「これは、何があったんですか。」
「森で突然何かに攻撃されたらしいんです。でも、それが何なのかは分かりません。」
「こんなにも冒険者がいて原因が分からないんですか?」
「はい、小さな影を見たという人はいるんですが。」
「そうですか。あの人たちを襲ったのはこの魔物ではないでしょうか。」
「これは、ブレードマンティス!そんな、この街のすぐ近くにいるなんて。皆さん、ありがとうございます。この事はギルド長に伝えますので、あそこでお待ちになってください。」
その後、すべての冒険者に緊急招集がかけられることになった。
その際、なぜかメイも招集され、Fランクなのにと文句を垂れるたのはまた別の話だ。