233話 双子の弟子
メイは演習場である2人を待っていた。
「師匠ー、久しぶりー。」
「お久しぶりです。師匠」
「ええ、2人とも大きくなりましたね。アン、ミナ」
「修学期間の時以来ですね。」
「あの時はしんどかったなー。」
「お、もう来てたか。久しぶりだな。お前らちゃんと訓練してたか?」
「クレソン、当然じゃない。あの時と同じだと思ったら大間違いだわ!」
「もう、あんな無茶苦茶な訓練は御免ですし。」
「それはそうだな。」
「では、早速どれほど強くなったのか私に見せてください。」
「師匠に宿題の成果を見せる時だね。」
「お手柔らかにお願いします。」
メイは剣を抜き構える。
アンとミナは相反する魔法陣を展開し、上手く混ぜ合わせる。
「合成魔法«凍える炎»」
氷と炎という2つの属性が拮抗することなく混ざり合い威力が増している。
メイはその魔法を剣で逸らし、回り込んで横から攻撃を仕掛ける。
アンは瞬時に結界を張り、時間を稼ぎミナがその上から強固な結界を構築する。
メイがその結界を破壊する間に魔法を展開し、攻撃する。
その場から飛び退き、回避する。
「2人でやってるのに攻めきれないなんて、相変わらず師匠おかしいよ。」
「しかも、手加減してるって言うのが、意味わからないです。」
「2人とも強くなりましたね。宿題は合格です。」
「やったー!これで地獄を見ないですむ!」
「2人ともあからさまにホッとした顔してるな。」
「クレソンの時は宿題どうだったの?」
「俺か?瞬殺されたよ。一応合格だって言われたけどな。」
「そうなんですか。師匠もつい、力が入ってしまったんでしょうね。」
「そうなんですよ。思ったよりも動けていたので、つい。」
「そのつい、で俺は半日寝込んだんだが?」
「運が悪ったって事ね!」
「それですまされるのは納得がいかない。」
「そんなことより、この街のこと教えてよ。美味しそうな匂いが街中から香るんだよ。もう我慢できない!」
「そんなことじゃねえよ!…はぁ、お前に言っても聞いてないか…」
「ドンマイです。」
「肩を叩くんじゃねえ!」
「それでは私は少しやることがあるのでこれで。」
「えー、師匠も一緒に行こうよー。」
「すいません。また今度行きましょう。」
「チェ、絶対だからね!」
「ええ、楽しんで来てください。」
メイは手を振り、3人を見送った。
「さて、辺境伯様からの呼び出し、一体なんでしょうか。」
その呟きは風の中に消えていった。