230話 圧倒的な力
勇者視点
エイラさん達と合流し、魔物を倒す。
魔物達は港から這い上がり、建物を破壊していたが、そういう個体は最優先で倒されているようだった。
「順調だな。このままいけばだが。」
「変なこと言わない。こういうのは大体実現するんだから。」
「そうだな。もうやめておくわ。」
「もう遅くないですか?」
そう話していると、海の方から魔力が高まった気配がした。
「変なことは言うなっていつも言ってるのに!」
エイラさんは障壁をはり、敵の攻撃を受ける。
だが、エイラさんの顔を見る限り、数回が限界なようだ。
「何とかヤツの所まで行かないといけないが、海の上をどうやったら移動できる。船の上でなんて戦ったことねえぞ。」
「確かに、このままじゃジリ貧ね。海を凍らせて道を作るからそれを通りなさい。」
「よし、エイラが道を作るまで何としてでもエイラを守るぞ。」
「はい、やってやりましょう。」
エイラさんは詠唱を始めた。
敵はその詠唱を阻止しようと、魔法を放ってくるが、全員で盾を使って防いでいる。
「これで行けるわ!氷魔法«氷の道»!」
「よし!行くぞ!」
リーゲルさんと共に敵に突っ込んでいく。
俺達が敵に突っ込んで行くのを見て、他の冒険者達も船に乗ってそれに続く。
敵は、俺達ではなく船で敵に近づこうとしている冒険者達を狙っているらしい。
次々と冒険者が乗った船が破壊されていく。
いつ狙われるのか気が気ではなかった。
何とか敵の側まで近づいたが、まったく攻撃出来なかった。
敵は強固な結界を構築しており、剣撃ではそれを破壊できなかった。
そんな俺達の横から衝撃が走った。
何事かとそちらを見ると、魚人が氷の道に上がって来ようとしていた。
「そんな、1人でもダメだったのに、2人だなんて。」
メイ視点
「さっきまで順調だったのに。」
『魔族が2体か、助けるのか?』
「これは助けますよ。でないと死にますから。」
魚人の背後には魔物の群れがあり、時間差で攻撃するつもりだったことが分かる。
メイは港に殺到する魔物を海ごと氷漬けに砕いた。
「魔物をあんな一瞬で倒すだと!お前は何者だ!」
魔族の2人はメイがもっとも警戒しなければいけない強者であることに気づいたようだ。
「死に行くものに知る必要はない。2人まとめて相手してあげます。かかってきなさい。」
魚人は水を使った攻撃をしてくる。
だが、それを氷にし砕いて無効化する。
魔人は空間魔法で逃げようとしていたため、空間魔法を使えないように結界を構築しておいた。
「なんでテレポート出来ないんだ!」
ヤケになったのか、大量の魔弾を放ってくる。
それらもすべて撃ち落とし、敵の背後に展開した魔法陣で消し炭にした。
それを見た魚人は逃げようとしたが、メイが逃がすはずもなく、氷の矢で串刺しにされ、息絶えた。
「き、君は何者なんだ…?」
「あなた方が知る必要はありません。」
それだけを言うと空間魔法でワープした。
勇者視点
あの後、魔物の死体を片付けたりなどの後処理をしていたが、俺の頭には俺達を助けた女性のことしかなかった。
女性以外の印象が残らないように阻害されていた聞いたが、今はそんなことどうでもいい。
「次会ったら、礼を言わないとな。」
俺達では1人でもダメだったのに、2人相手に圧倒的な力の差を見せつけトドメをさした。
本当にすごいと思う。
その後、海龍の巫女の祈りによって、港の中に潜んでいた魔物達を追い払い、後処理は終了した。
店を壊された主人曰く、「保険に入ってるから逆に嬉しいよ!」とのことだった。
たくましいな、おい。
とりあえず、事件を解決することもできたし、王都に帰るとしよう。
これで、俺の初めての任務の話は終わりだ。