227話 予定調和
勇者視点
街を見て回った後、解散して各々身体を休めることになった。
しかし、まだ昼過ぎの時間帯であったため街を見て回った時に気になった店に行ってみることにした。
「さすが、大きな港がある街だな。王都にも無いような品物がたくさんある。魚とか生で売られてるじゃん、ちょっとカルチャーショックかも。」
そう言って店を冷やかしていると、路地裏から
「いや!離して!」
という叫び声が聞こえた。
あまり目立たないようにと言われているが、襲われている人を放ってはおけないので、助けに入る。
路地裏に入ると、男2人が女性を捕まえようとしていた。
「こんなところで何してるんだ!」
「助けてください!襲われているんです!」
女性がそう言うと男たちは明らかにうろたえた。
「その人を離せ!」
「ちょっと待て!我々は!」
「問答無用!」
街に男たちの悲鳴が響き渡ったのだった。
「助けていただきありがとうございます。」
「いえ、襲われている人がいるなら助けるのは当然ですよ。」
「私はエマエラ。あなたのお名前を聞かせていただけますか?」
「俺はユリエスです。」
「ユリエスさんですか。この街の案内は必要ありませんか?」
「はい、実はこの街に来るのは初めてなので、オススメの場所を教えていただけると嬉しいです。」
「では、助けていただいたお礼に案内させてください。」
「それはありがたいです。」
メイ視点
『あれが海龍の巫女じゃな。』
「ホントに仕込んでないんですよね?信じますよ?」
『本当じゃ、信じてくれ。』
「どうして巫女が出歩いているんでしょう?普通神殿にいますよね。」
『何かあったんじゃろうか?』
「一応監視しておきますか。」
『だが、勇者が近くにいるなら不埒者共に攫われることは無さそうじゃの。』
「どうしてです?彼はまだ勇者を名乗るには未熟なのでは?」
『勇者には運が味方するのじゃ。敵の攻撃を運良く避けることができたり、敵が目の前でコケたり、攻撃が急所に当たったり、とにかく勇者に有利な幸運が続くのじゃ。』
「それって実質最強では?」
『しかし、幸運は所詮幸運じゃ。それだけでは勝てぬ。負けることは少ないがの。』
「前に言っていた私でも簡単に勝てないというのはその幸運のせいですか?」
『そうじゃ、それなり以上の実力を身につければ幸運によってソナタの攻撃ですら当てることは難しくなるのじゃ。』
「なるほど、今はどうなんですか?」
『今の勇者とソナタの実力差はどれだけ幸運が続いても勝負にならないくらいの差があるぞ。もちろんソナタが勝つ。』
「へ〜、幸運によって負けることがないというのはすごいですね。色々優遇されすぎじゃないですか?」
『しょうがないじゃろ、勇者は人類の希望なんじゃ、そう簡単に死なれては困るのじゃ。そんなことよりも、あの2人店の中に入っていくぞ。』
それから2人は散策を楽しんだ後別れようとした。
その時、
「居たぞ!巫女様を攫った誘拐犯だ!」
兵士たちが勇者を取り囲んだ。
勇者は状況を理解できておらず、オロオロとしている。
このままでは捕まってしまうがどうしようか。
『まあ、待つのじゃ。ここからが楽しいところじゃからの。』
メイにはニンマリと笑う聖神の顔がありありと思い浮かんでいた。