226話 仕込み疑惑
勇者視点
「街の中心地は結構ゴチャゴチャしてますね。」
「この街は元々漁村だったところに作った街だから、後に作られた街の方がキレイに作られてるんですよ。」
「ふーん、もし街中で戦うことになるならここの方が戦いやすそうだ。」
「それにしても、人がいっぱいで少し落ち着かないね。」
「うわ!」
ユリエスが人とぶつかる。
「すいません、大丈夫ですか?」
「ああ、すまねえな。急いでて…って、こんなことしてる場合じゃねえ。じゃあな」
その男はすぐに走り去って行った。
「何をあんなに急いでるんでしょうか?」
「さあ、何かあったんだろう。街の南側は大方見て回ったな。1度宿に戻ろう。」
メイ視点
メイは勇者にぶつかった男を追いかけていた。
『あの男、絶対何かあるはずじゃ!だって、勇者とぶつかったから!』
「理由がしょうもないんですけど。」
『まあまあ、騙されたと思って、1度やってみてくれ。』
「はあ、違うかったら自分のやり方でやりますからね。」
『うむ、勇者という者の異質さに気づくことができるじゃろう。』
男は一軒家に入っていった。
見た目は普通の民家のようだが、様子がおかしい。
窓から中を覗くと、10人ほどの男が集まっていた。
メイが聞き耳をたてると、
「おい、本当に魔族は俺たちの作戦に乗るんだよな!」
「急にどうしたんだよ。そう言っただろう。」
「東の海岸にいたはずの魔物の群れが消えてるんだ!もしかして、シッポ巻いて逃げたんじゃないだろうな!」
「人間が魔族に勝てるわけないだろう。西の魔物の群れが殺られたらしいから隠してるんだろ。」
「それならいいんだが。」
『ビンゴじゃな。』
「仕込んでます?」
『仕込んどらんわ!』
「これが勇者の運命ですか。気持ち悪いくらいですが、便利ではありますね。」
『どうするのじゃ?』
「少し、話を聞くことにしましょう。」
メイは扉を蹴破り、乱入する。
「何者だ!」
「私が誰かなど、知る必要はない。お話をしましょう。楽しく、平和的に、ね。」
少しした後、その家からは男たちの呻き声以外はきこえなくなっていた。
『どこが平和的なんじゃ?』
「平和的にいこうとしたのに、向こうが攻撃するからですよ。」
『あんなにボロボロになって可哀想に。』
「そんなことより、水門を開けて魔物を街中に入れるとか言ってましたね。」
『後は海龍の巫女か。ワシの管轄外の話じゃのう。』
「管轄とかあるんですか。」
『海龍の巫女は海神の管轄じゃ。』
「海龍の巫女ってなんですか?」
『海龍の巫女は海の平穏を祈る巫女じゃ。その祈りの前では海の生物は大人しくなる。魔物でもじゃ。』
「海の生物だけに特化しているんですね。確かに今回の侵攻計画にとって1番の障害はその巫女ということになりますね。」
『うむ、そろそろ勇者が巫女と会うんじゃなかろうか。』
「やっぱり仕込んでますよね。」
『仕込んでないって、言っとるじゃろ!』