223話 港湾都市
『ハロー、また魔族が出たぞい。』
「最近静かだと思っていたら、魔族ですか。」
『そうなんじゃ。面倒なことに、人間と協力して港湾都市を破壊しようとしておる。』
「その街の名前は?」
『港湾都市カールディアじゃ。かなり大きな都市じゃからの。ここを落とされれば王国にとって痛手になることは間違いない。』
「教会は動くんですか?」
『勇者を派遣しようとしているようじゃ。数ヶ月ほど訓練をこなしていたらしいから、いけると思ったのじゃろうな。』
「あまりアテになりそうではありませんね。」
『勇者は便利じゃぞ。道でバッタリ遭遇した人物が事件の重要人物だったというのは毎度の事じゃ。』
「勇者を監視するんですか。まあ、それもアリではあるんですけど、時間がかかるのはちょっと…」
『何でじゃ?』
「授業があるからですけど。この前も言いましたよね。」
『学園の授業と王国、どっちが大事なんじゃ!』
「授業かな?」
『何でじゃー!』
翌日
「ここがカールディアですか。」
『結局ワシの頼みを聞いてくれるな。そういう所が気に入っおるのじゃ。』
「うるさいですよ。」
『勇者が来るのは3日後の予定じゃし、それまでは街に異変が無いか探すだけになりそうじゃな。』
「そうですね。でも一見すると何かあるようには見えないですけどね。魔族の反応もありませんし。」
『ワシの情報が間違っておるというのか。』
「まあ、役に立たないこともあったので。」
『いつまで引きずるんじゃ!今回は大丈夫じゃ!』
「冒険者ギルドに行ってみますか。何かあるかもしれません。」
『そうじゃな。ソナタFランクじゃったよな?』
「いえ、この前Eランクに上がりました。」
『お、そうじゃったか。』
冒険者ギルドに行くと、鎧を着ている人よりも長靴にツナギという漁師スタイルの人の方が多かった。
「すいません。」
「どうかしましたか?」
「私先ほどこの街に来たのですが、何か異変などはありませんか?」
「そうですね。例年よりも海の魔物が少し多く出現している以外にはありません。」
「それと、この街での装備はあの人たちが着ている漁師の格好が一般的なんでしょうか?」
「そうですね。ですが、アレはただの漁師の服ではありません。魔物からの攻撃を防ぎ、なおかつ水の中でも動きやすくという目的を追究した服なのです。鎧を着ている人は陸の魔物を狩っている人達ですよ。」
「なるほど、ありがとうございます。」
「魔物の量が多くなってると言っていましたね。魔族に水中で活動できる種族っていましたっけ?」
『おるにはおるが、人間とことを構えようとはせんはずなんじゃがのう。』
「と言うと?」
『水中に住む魔族は魚人族じゃな。じゃが、ヤツらは人魚族と戦争をしとるはずじゃ。人間と戦う余裕など無いはず。』
「他の魔族もその戦いに参戦するとかですかね?」
『いや、魔族と言っても全員が人間を攻撃しようと考えておる訳ではない。あくまで人間を滅ぼそうとしておるのは魔人族と獣人族くらいじゃ。今まで戦ったことがある魔族はその2種類じゃろ。』
「確かに、そうですね。他の魔族は中立ということでいいんでしょうか?」
『うむ、人間と生息域が接していないのならば敵対する理由も無いのじゃ。』
「なるほど、そうなるんですね。とりあえず、今からすることは、帰ってご飯でも食べましょうか。」
どこからかズコーという音が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
『気のせいじゃないわ!これから海を調べるとか色々あるじゃろ!』
「来るまでに時間がかかりすぎてもう暗くなるじゃないですか。海なんてもっと暗くなりますよ。調査はまた明日ということで。」
『ぐぬぬ、仕方ない、のか?』
「そうです、仕方ないんです。」