220話 告白
「サキ、話したいことがあるんだ。」
少し逡巡してから扉を開ける。
「ど、どうしたの?」
「中に入ってもいいか?」
「う、うん。」
カイトは椅子に座り、サキはベッドに座った。
「それで、どうしたの?」
「いや、サキが俺のことを避けてるから、何でなのかと思ってな。」
「べ、別に避けてなんかないわよ。」
「嘘はいらない。お前は嘘をつくとき右を見るんだよ。教えてくれないか?」
「……」
「だんまりかよ。仕方ない。嬢ちゃんにこんな時のための対処法を聞いてきてるからな。」
「対処法って…うわぁ!」
カイトはサキを抱き寄せ、頭を撫でてみる。
「な、何してるのよ!」
「顔が赤くなったら成功だって言ってたな。リンゴみたいになってるぞ。」
「う、うるさいわね。離しなさいよ!」
「話をしてくれるまで、このままだ。」
「こんな事が対処法な訳ないでしょ!」
「でもなー、結構効果ありそうだぞ。」
「うう、このバカー!」
「昨日はサキの部屋に言ったんだけど、結局理由は話してくれなかったよ。」
「そうですか。その後の様子はどうなんですか?」
「心なしか機嫌が良さそうに見えたぞ。」
「では、成功ですね。これから毎日やりましょう。」
「ま、毎日だと!それはどうなんだ?妹とは言え、女の子の部屋に入り浸るのはどうかと思うぞ。」
「そういう所がサキさんを怒らせるんですよ。このヘタレが」
「へ、ヘタレじゃねえし!分かった、毎日言ってやろうじゃねえか!」
「では、サキさんの心のケアは任せましたよ。」
「それ必要か?」
「必要ですよ。今のサキさんはかなり不安定ですから。」
「分かった。任せてくれ。後、さっきマリアさんに呼び出されたんだよ。」
「それ、サキさんに言いましたか?」
「いや、言ってねえよ。それよりもさ、呼び出すっていうことは、そういうことだよな?」
「カイトがここまでバカだったとは。」
「誰がバカだ。」
「マリアさんの件についてはカイトの好きにすればいいと思います。」
「適当だなぁ。」
「秘密を話さないのなら、私がとやかく言う必要はありません。」
「そんなモンか。」
「そんなモノですよ。」
カイト視点
嬢ちゃんと別れてから、呼出された場所に向かう。
なぜか屋敷の中ではなく、レストランに呼ばれていた。
「あ、カイトさ〜ん!」
そこには先にマリアさんがいて、俺に手を振ってきた。
それに手を振り返し、
「お待たせ、待たせてすまない。」
「いえ、お仕事なら仕方ないですよ。それに、今来たところですから。」
「それで、話って?」
「あんまり焦っちゃダメですよ。まずはご飯を楽しみましょう。」
「そうだな。」
ディナーを楽しんだ後、彼女の方から切り出してきた。
「カイトさん。好きです。付き合っていただけませんか?」
「それは…」
「き、急に言われてもびっくりしますよね。返事は後日聞かせてください。」
そう言うと彼女は店を出ていった。
「…おかしいな。すぐに断るつもりだったのに。」
あんな風にまっすぐに気持ちを伝えられることは前世を含めても初めての経験だった。
「これは…しんどいな。」