219話 悩み
メイの性格が悪いことが判明した次の日もマリアによるアプローチは続いていた。
カイト曰く
「マリアさんと話してると視線を感じるんだ。周りを見渡すとニヤついてる嬢ちゃんとカレン様が顔を半分だけ出してこっち見てるんだよ。楽しんでるのを隠そうともしてないんだよ。」
との事。
「何なんだよまったく。」
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもないよ。嬢ちゃん達は聞き耳たててるし、サキはずっと不機嫌だし、マリアさんは話しかけてくるし。俺の仕事に支障が出るんだよ。」
「それは大変ですね。」
「原因の一端が何言ってるんだ。サキのヤツ、仕事の時も事務的な話しかしないんだよ。なんで怒ってるんだ?」
「女の子と話しているからじゃないですか。」
「女の子って、嬢ちゃんやカレン様と話してる時は怒ってないだろ?」
「はあ、これは重症ですね。」
「何が重症なんだよ。いたって普通だぞ?」
「サキさんの不機嫌は頭でも撫でてあげれば落ち着くと思いますよ。」
「?なんでそれで落ち着くんだよ。」
「それは自分で考えてみてください。」
「分からないから聞いてるんだけど。」
「1つ聞いてみたいんですけど、もしカイトが告白されたらどうしますか?」
「告白?それはあれか?女の子から付き合ってくれってことか?」
「そうです。それ以外に無いでしょう。」
「そうだなぁ。…断るよ。俺は恋人や家族には隠し事をしたくないと思ってる。でも、俺たちのやってる仕事は家族にも言えないような事ばかりだ。それに俺は世紀の怪盗だぞ?」
「まあ、そうですよね。それはそうと、最近怪盗事件起きてないですけど、サボってます?」
「サボってねえよ。あらかた潰したから休業中なんだよ。」
「まあ、カイトが安易な答えを出すことは無さそうなので安心しました。くれぐれも私に口封じをさせないでくださいね。」
「分かってるよ。俺たちが暴走すれば嬢ちゃんが出てくる事くらい最初から織り込み済みだ。」
サキ視点
「はあ」
「どうしたの?そんなにため息ついて、恋の悩みなら相談に乗ってあげるわよ。」
「こ、恋!?誰が誰に恋するのよ!」
「過剰反応しすぎよ。もっと落ち着いて。」
「うう、カイトはマリアさんのことどう思ってるのかしら。」
「カイトのことだもん。ただの仕事仲間だと思ってるんじゃないかしら。」
「もしあの2人が付き合ったりしたらどうすればいいのかしら。」
自分が言っていることは恋の相談とほぼ同じような気がするが、気のせいということにして、話を続けた。
「大丈夫よ。カイトは誰かと付き合うとかないと思うわ。カイトって1度付き合ったら結婚しないと、みたいなこと思ってそうだもの。」
「まあ、カイトはめんどくさいところあるから。」
それから少しの間カレンと話をし、時間も遅かったので、そのまま自室に向かった。
自室で寝る準備をしていると、
「サキ、いるか?」
「え、カイト?どうしたのこんな時間に。」
「ちょっとさ。話したいことがあるんだ。」
少し逡巡してから扉を開ける。
「ど、どうしたの?」
メイやカイト、サキがやっていることは裏の仕事が多く、誰かに口外すると相手とその周りの人間が排除されます。
画面の前のあなたがこのことを誰かに話すともしかしたら3人の中の誰かが口封じに行くかもしれない。(なお、メイやサキに口封じ欲しいという人は先にポリスメンを呼んだ方がいいかも。)