218話 他人の〇は蜜の味
「あの、カイトさん。買い出しに付き合ってもらっていいですか?」
「えっと、マリアさんだったよね。何を買いに行くんだ?」
「塩が無くなっちゃったらしくて、2kgほど買ってきてほしいと頼まれたんです。」
「じゃあ、俺が行ってこようか?」
「でも、私が頼んだのにお屋敷で待ってるだけなんて申し訳ないというか。それに、商店のおじさんは女の子が行くと値引きしてくれるんですよ。」
「分かった。じゃあ、掃除終わらせたら行くから待っててくれ。」
「はい、待ってますね。」
なんだあれ。
廊下の真ん中でイチャコラするなよ。通りにくいだろ。
壁から半身を出して覗いてみる。
「何やってんだ、嬢ちゃん。」
「いやー、カイトも隅に置けないなーと。」
「何言ってるんだよ。荷物持ち頼まれただけだろ。」
「わざわざ仕事してるカイトに頼むことじゃないんですよね。とりあえず、ラブコメは人のいない所でやってもらえます?」
「ラブコメってなんだよ!?い、意味わかんねえよ!」
「動揺がすごい。さすが童〇。」
「おい、やめろ。というか、俺が童〇かどうか分からねえだろ!」
「カイトにできる度胸があるとは思えません。」
「このガキ…人が気にしてること…」
「サボってないで早く行かなくていいんですか?」
「お前のせいだろ!じゃあな、行ってくる。」
カイト達が出掛けた後、
「あれ?カイトは?」
「サキさん、カイトはさっき買い出しに行きましたよ。」
「そう、見かけないからサボってるのかと思ったわ。」
「サキさん。」
「何?」
「いえ、何でもありません。呼んだだけです。」
「何よ、変なメイさんね。」
その日からカイトの近くにはマリアがいること事が多くなった。
「最近あの2人距離が近いわよね。」
「そうですね。まあ、マリアさんが一方的にアプローチしてるだけに見えますけど。」
「物語の主人公レベルの鈍感さね。」
「む〜、カイト〜」
「サキさん、力を入れすぎです。コップがミシミシ言ってますよ。」
「サキも素直になればいいのに。」
「な、変なこと言わないでよ。私が素直になる?何に対してよ。」
「カイトに対してでは?ほら、カイトですごい反応してるじゃないですか。」
「と、とにかく、変な勘違いはやめて。カイトがどうしようと関係ないんだから。」
「まあ、それもいいですけど、後悔しない選択をしてください。」
「あ、カイト」
サキは首がもげるのではないかと思うくらいの速度で振り返った。
「うお!サキ、急に振り向くなよ。ちょっとホラーだったぞ。」
「何持ってるんです?」
「マリアさんがこの前荷物持ちしてくれたお礼だって、クッキー焼いてくれたんだよ。1枚食べてみたけど、店で売れるくらい上手いんだよ。」
「料理も上手なのね。」
サキは突然立ち上がってどこかに行ってしまった。
「おい、サキ!アイツどうしたんだ?」
「さあ?思うことがあったんじゃないですか?」
「なんかさ、お前ら楽しんでるだろ。」
「他人の不幸と恋路は蜜の味です。」
「性格悪すぎだろ。」