217話 人生を変える出会い
今日はヒスイルを預かる最後の日だ。
「今日の夜に迎えに来るのよね?」
「向こうの予定に変わりが無ければそのはずです。」
「昨日まで忙しくて遊べなかったし、今日は私と遊びましょうね。」
「うん、お姉ちゃんと遊べて嬉しい。」
「ああ〜、可愛いわね〜。」
「何をしますか?」
「ボールで遊びたいな。」
「じゃあ、庭に行きましょう。」
3人で遊んでいると、
「なあ、メイ…さん。昨日俺を襲ったヤツらってさ。」
「殺しました。護衛対象を護ることが最優先なので。」
「そっか、そうだよな。俺は…」
「あなたが責任を感じる必要はありません。それが私や彼らの仕事だっただけのことです。」
「俺のことは仕事で相手をしているだけか?」
「はい。ヒスイル、あなたは私のような契約で動く人間だけでなく、人との繋がりを大切にしている人を見つけなさい。」
「そうなんだ。」
「もう、何話してるのよ。顔が暗いわよ。ちょっと休憩しましょ。」
日が暮れて少し経った時、
「迎えに来ましたね。送ってきます。行きますよ。」
「う、うん。」
「私も行こうかな。」
「向こうと話をするので、外してもらえると助かるんですが。」
「えー、しょうがないな〜。」
外に出ると、男が1人駆け寄ってきた。
「坊ちゃん!襲われたって聞いて心配で心配で…」
「マーガス、大丈夫だ。このメイに助けてもらったから。」
「アンタが坊ちゃんの世話をしてくれたのか。助かったよ。今回はどうなるか分からなかったから。…それじゃあ帰りましょうか。」
背を向け、歩き出したヒスイルに声をかける。
「ヒスイル。もし、あなたが裏稼業なんてしたくないと思ったのなら、私のところに来なさい。出世払いで手助けしてあげますよ。」
「ハハ、それいいな。でも、そんな事はできない。俺はアンタに借りがある。その借りを返す前にもう一つ借りを作るなんて、俺の信念に反する。俺は覚悟を決めた。この世界で強くなってアンタに借りを返す。待ってろよ。」
「気長に待つとしますよ。」
「坊ちゃん。変わりましたね。見違えた。」
「最初は悩んでいたけど、今のままの俺じゃダメだって思って、変わろうと思ったんだ。」
「いい出会いは人生を変えてくれる。俺にとってのボスだったように、坊ちゃんはあの人だったんですね。」
「そうだと、いいな。」