215話 僕だって
「イヤだイヤだ!」
メイの部屋から叫び声が聞こえる。
「わがままを言わないでください。」
「なんで僕がお前と一緒に寝ないといけないのだ!こ、これでも男なんだぞ…」
「照れてるんですか。マセてますね。」
「照れてなんかいないやい!とにかく、お前となんてやだ!」
「仕方ないでしょう。急に来たせいで、部屋が用意できていないんですよ。子どもを床に寝かせるわけにも行きませんし。」
「だ、だからってお前と寝るなんて!他のヤツはいないのか?」
「他の人に迷惑をかける訳にはいきませんから。ホラ」
「ヤダー!」
必死の抵抗も虚しく、捕まってしまったヒスイル。
「ヨイショっと、暴れないでください。」
「お前力強いな!」
「おネンネしましょうね。」
「モガモガ!」
ヒスイルの顔を胸に押さえつけて、動きを封じる。
「明日は早いので、早く寝てください。」
「モガー、モガモガ(クソー、仕方ない)」
「何言ってるか分からないんですけど。」
翌朝
「昨日は大変だったみたいね。」
「昨日だけでなく、今朝も大変でしたよ。着替えを見られたくないって。」
「フフフ、照れちゃってカワイイわね。」
「そうですか?ふてぶてしいだけですよ。」
「用意できたぞ。」
「学園に行きましょう。先生もあなたくらいの子なら許してくれるでしょうし。」
学園に行き、事情をはなす。
「分かった。今日だけなら、許そう。どういう関係なんだ?似てないし、弟じゃないよな?」
「知り合いに世話を頼まれただけですよ。」
「そうか。ボウズ、みんなに可愛がってもらえよ。」
ヒスイルの頭をワシャワシャと撫でているが、コイツが裏の世界のボスの子どもだと伝えたらどうなるんだろ?
「キャー、カワイイ!」
アリュールがヒスイルに飛びつき、頬ずりしている。
「あの、アリュール。ヒスイルも困っているので、そこら辺で。」
「あ、ごめんね。私はアリュール、よろしく。」
「うん、よろしく!」
授業中は渡していた紙とペンで絵を描き、休み時間中はその描いた絵を披露していた。
絵を描くの上手いな。
「いつまで預かってるの?」
「3日間ですよ。」
「明日と明後日は休日だよね?何か予定は?」
「ありませんよ。ただ、スラムの方には近づかないですね。」
「スラム?何かあるの?」
「子どもがいるんですから、スラムなんて教育に悪いところ連れていきませんよ。」
「メイちゃん…私たちも子どもだからね?それはそうと、明日市場に行かない?お姉さんが案内してあげるね。」
「うん!楽しみ!」
あまり連れ回すのはよくないが、まあいいか。
「そうですね。」
ポンポンとアリュールの肩が叩かれた。
「アリュールさん。この前提出するように言った課題はどうしたんですか?」
「あ!ごめんなさい先生。忘れてました。明日必ず持っていきます。」
「必ずですよ。」
「マズイよメイちゃん!私完全に忘れててやってない!今日は徹夜だー…ごめんね。市場行けなくなっちゃった。」
「えー、楽しみにしてたのに。」
「仕方ありませんよ。2人でも良ければ行きますか?」
「ホント?一緒に行ってくれる?」
「ええ、行きましょう。」
可哀想な子どもを演じてるな。
「えへへ、やった。」
「カワイイすぐる。」
「アリュール、鼻血が出てますよ。」
「うわ!あわわ」