214話 お守り
「よう、お嬢ちゃん、ちょっと振りだな。突然だが、仕事を頼みたいんだが。」
「ゼファーソン、こういう所で話しかけるのはやめて欲しいんですけど。」
「仕方ないだろ。コンタクト取るならこれしか無いんだから。」
「で、仕事って言うのは?」
「ガキを1人世話して欲しい。あらゆる危険から守ってくれ。」
「護衛対象が増えるのは良くないんですけど。」
「3日でいいんだ。その間ウチは忙しくなるから子ども1人に人手を割けないんだよ。」
「そっちは大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。裏切り者も始末したし、モノも揃ってる。これで負けるなら何しても勝てねえよ。」
「それならいいのですが。あなた方が潰れると、計画が崩れるんですよ。」
「計画ねえ。成人もしてないガキんちょに何させてるんだか。アンタの雇い主は使えるものは何でも使うって感じの人だが、見さかい無さすぎだろ。」
「それは私も思うんですけどね。お金もらってるので、まあいいかなと。」
「アンタを雇い続けたら破産しそうだぜ。」
「私はコスパいいですよ?子守りにおいては特に。」
「ハハハ、こっちに来てくれ。お守りをしてもらう相手だ。取引相手のお子さんだから、丁重にな。」
「相手の態度によりますよ。」
「それは…死ななかったらいいか。」
「諦め早くないですか?」
「らんぼう…やんちゃ坊主だから、丁重は無理なんだと思うんだ。」
「あ、そうですか。」
スラムの建物の中に相手がいるらしい。
「おーい、坊ちゃん。遊び相手を連れてきたぞ。」
「僕をこんなに待たせるなんて!パパに言いつけるぞ!」
「ハハ、スマンスマン。(首の骨へし折るぞクソガキ)」
「顔に出てますよ。」
「な、なんの事だ?坊ちゃんの名前はヒスイルだ。」
「コイツが僕の相手をしてくれるのか?こんなちんちくりんが?」
「私より小さいのにちんちくりんって。」
「そんなに僕と遊びたいなら遊んでやるぞ!僕は優しいからな!」
「わぁー、嬉しいー」
「もうちょっと感情を込めろ。棒読みじゃねえか。」
「ちょっと、こっちに来てください。」
「ん?なんだ?」
建物の外に出てくる。
「あのクs…坊ちゃんはどこの子ですか?」
「ウチと提携してる組織の子どもだ。歳は8歳で、遊びざかりだな。ちゃんと相手してやれよ。」
中に入ると、
「どこに行ってたんだ。僕を待たせるなんて生意気だぞ!」
ゼファーソンの目を見て訴えかける。
(この借りは高いですよ。)
(借りは返すから頼んだぞ。)
という感情が
「…すいません。色々話しておかないといけなかったので。じゃあ、私の住んでいる家に行きましょうか。」
「これがお前の住んでいる家か?お前、偉いのか?」
「いえ、私はこの屋敷の主に雇われているだけですよ。話を通しすので、大人しくするように。」
「はーい」
メイド長とカレンに話をすると。
「いいんじゃない?3日だけなんでしょ?」
「ダメです!どこの誰とも分からないような子なんて。」
「学園に行く時も連れていきますし、迷惑はかけません。そうですよね?」
「うん。お姉さん。ダメかな?」
コイツ、自分の武器を把握しているな。
さっきまではふてぶてしかったのに、今は上目遣いで子どもらしさを前面に押し出している。
恐ろしい子。
子ども好きなメイド長はそんなヒスイルの仕草を見て、
「クッ、そんな顔をしても…しても…ダ、ダメです。」
「グスッ」
「グフッ!…し、仕方ありません。迷惑はかけないように!分かりましたね。」
撃沈した。
「うわぁーい!ありがとう、お姉さん!」
こうして、少しの間ヒスイルが居候することが、決まった。
してやったりみたいな顔するなよ。バレたらどうするんだ。