213話 事象改変
メイと魔族の男が向かい合う。
どれ程の実力者が送られて来ているのか確認するため相手の出方をうかがう。
突風が吹き荒れ、男が叫ぶ。
「切り裂け!」
その声と同時に不可視の攻撃がメイを襲う。
その攻撃を横に飛び回避する。
「めんどうな魔法を使いますね。」
「ハッ!俺の魔法を避けるとはやるじゃねえか。だが、次はそうはいかねえ。ズタズタに切り裂いてやるよ。」
「それは遠慮したいところですね。」
「嵐魔法«刃の嵐» 避けるなら避けられなくすればいい。」
「妥当な判断ですが、その程度で私を殺れると思うなら、未熟ですね。《事象改変》«風よ、消えろ»」
その瞬間、世界から風という概念が消えた。
当然、嵐も消えるため男が放った魔法も消えた。
「は?なんで消えるんだよ。もう一度…何でだ、できない!」
「よそ見をするとは余裕ですね。」
「しまっ」
男が振り向く前に、首を跳ね飛ばす。
「お仕事完了ですね。」
『あの、世界の概念とか法則を書き換えるの、やめてもらえます?』
「あの程度で狼狽えるとは、送られて来た魔族は弱かったですね。」
『無視はやめい。まったく、仕事が増えるんじゃぞ。』
「もう、戻しておいたので、後処理はお願いしますね。」
『はあ、そう言えば、魔族の使った魔法に対して、めんどうと言ったのはなんでじゃ?』
「風魔法は不可視の攻撃なんですけど、光の加減で大体は分かるんですよ。でも、夜は暗いので分かりにくいんですよ。」
『なるほど、おもしろいのう。環境で厄介さが変わるとは。』
「まあ、終わりましたし、帰りましょうか。さっきの嵐魔法のせいで、人が起き出したようですし。」
『結局、警戒すべきなのかの?』
「今回は騎士団で対処できるレベルでしたが、次はもっと上位の魔族が出てくると考えた方がいいです。それに、警戒はして損ではありません。」
『そうじゃな。神託で魔族が狙っておると伝えておくわい。』
「そうしてください。」
屋敷に戻ると、部屋にカイトがいた。
「よう、今までどこ行ってたんだ?不良娘」
「え、ちょっと用事があったので。」
「一言くらい言うべきなんじゃないか?帰ってきてたはずなのに、いないんだからさ、心配するだろ。」
「ご、ごめんなさい。」
「まったく、どうせメシ食ってないんだろ。温めてやるやから、ついてこい。」
「ありがとうございます。」
「次はなんか言ってからにしろよ。一応歳頃の女なんだからよ。」
「はい。そうします。」
その後は、カレンからも叱られ、反省はしつつも聖神に八つ当たりしようと思うメイだった。