211話 勇者襲撃計画
「ハロー、久しぶりじゃのう。」
「あ、役にたたなかった聖神だ。」
「しょうがないじゃろ!教会と信徒がいる街の中の企てなら分かるんじゃが、街の外は全部は分からんのじゃ。」
「それにしても遅いですよ。私が移動を始めた後に言われても。」
「ソナタの感知範囲が広すぎるだけじゃ!半径5キロくらいはあるじゃろ。」
「それで、今度はなんですか?」
「今回も魔族絡みじゃ。向こうも勇者を認識したらしくての、育つ前に潰そうと画策しておるようじゃ。」
「場所は?」
「王都から西に5kmほど移動した村じゃ。秘密の訓練場でな、一般人はただの村じゃと思っておるじゃろうな。」
「明日も授業なんですが?」
「早めに倒してくれると、助かるんじゃが…」
「すぐに動きそうなんですか?」
「いや、今のところは情報を集めている所のようじゃ。」
「それなら放課後でいいですか?」
「まあ、倒してくれるならいつでもいいんじゃが…あ、そうじゃ、この前みたいに話しかけるのは良くないみたいじゃから、枕元にプレゼントを置いておくことにするわい。それを身につけている時は負担を軽減できるはずじゃ。」
「分かりました。」
むくりと起き上がり周りを見渡す。
「これが言っていたプレゼントですか。」
それは神力が込められたペンダントだった。
「このデザインは、聖教徒のかけている物ですね。」
「おーい、嬢ちゃん起きろー、遅刻するぞー。って何持ってんだ?嬢ちゃん、そんなに熱心な聖教徒じゃ無かったよな?」
「カイト、これはお守りですよ。」
「それに変な細工をしたんじゃないだろうな。そんなことしたら聖教徒が黙っちゃいないぞ。」
「私はしていないので、大丈夫です。」
「怪しいな。ま、いいか。早く朝飯食っちまえよ。」
『ソナタ、聖教徒じゃったのか?』
「あなた、異教徒と話してると思ってたんですか?」
『無神論者かと思っておったわ。』
「産まれた時に洗礼を受けているので、括りとしては聖教徒ですよ。それに神と話しているのに、神を否定はしません。」
『なるほどな。ふむ、ちゃんと話せておるし、負担も少ないようじゃな。』
「だからと言って、ずっと話しかけてはこないでくださいね。」
『分かっておるわ。今回は機能しておるかどうかの確認じゃ。see you good bye』
「無駄に発音がいいんだよな。さて、いいかげん起きないと。」
その日は、夢で聞いた勇者のことが気になって授業に集中できなかった。
「良い隠れ蓑になってくれれば良いんですけどね。」
「何か言った?」
「いえ、何も。今日は少し用事があるので先に帰りますね。」
アリュールに断りを入れ、学園を出る。
王都には行ったことがあるので、空間魔法で転移する。
「久しぶりに使いましたね。使うほど強い相手がいなかったってことなので、いい事なんですけどね。」
『何独り言を言っとんじゃい。早く行かんか。』
「私まだその魔族がどこにいるか知らないんですけど。」
『あれ?言っとらんかったか?』
「言っとらんですね。」
『マネはせんでいい。その村の宿に冒険者に化けて堂々と潜入しておる。今は強力な魔物が近くにいるということで騎士団の主力部隊が駐留しておるからの。向こうも動けんようじゃ。』
「だから、そういうのは早く言えと前に言いましたよね?これ、襲ったら私が犯罪者じゃないですか。」
『攻撃すれば、正体を現すと思うぞ?』
「現さなかったら?ただの悪者ですよ。」
『夜中にコソコソしておる所を襲撃するしかないようじゃのう。』
「特定はしておいて後は待ちですね。こんな事ならお弁当でも持ってくるべきでしたね。」
『のんきじゃのう。』