210話 ワイバーン
ワイバーンの巣があるという場所に来た。
巣は池の中の小島にある雑木林の中にあるらしい。
メンバーはメイ、カレン、アリュール、クレソン、フラスの5人だ。
「キレイな場所ね。水も透き通ってて、普通に遊びに来たいわね。」
「ギルドの監視員がいるって言ってたけど、どこかな?」
「あなた達が依頼を受けた冒険者?」
「そうだ。アンタらは監視員であってるか?」
「あっている。では我々は邪魔にならない所で見ている。」
そう言い残すと、監視員達はそそくさと遠くまで避難して行った。
「あんな遠くまで行って監視なんかできるのかよ。」
「彼らは偵察が主な任務なので、戦闘能力はあまり無いのでしょう。」
「池の中にある小島までどうやって行くんだ?泳いでか?」
「そんなことをしていたらすぐにワイバーンに食べられますよ。アリュール、水面を凍らせて行きましょう。」
「うん、ルゥお願い。」
氷の道を通り、小島に上陸する。
「ここ、結構ぬかるんでるね。歩きにくいよ。」
「それに、人が入ってないから、雑草もすごいわね。」
「草や枝は俺らが払っていくからついてきてくれ。」
クレソンとフラスが剣で邪魔な草や枝を払って進んでいく。
「ワイバーンはどこだ?」
「虫ばっかりで他の動物の痕跡が無いね。」
「逃げちまったか?」
「そんな報告は受けていないぞ。」
ガサガサと横の茂みから音が鳴る。
「なんだ?敵か?」
全員が警戒するが、そこから出てきたのはネズミだった。
「なんだネズミか。」
そう言って一息つこうとした瞬間、後ろの茂みからワイバーンが口を開けて突進してきた。
「どわ!?危ねえ!!」
ガチンッと歯がぶつかり合った音がし、ワイバーンはその勢いのまま、地面を走り去っていく。
「にゃろ!逃がすか!」
「待ちなさい!既に私たちは囲まれています。」
「ウソだろ!木の上にワイバーンが飛んでやがる。鬱蒼としてるせいで気づけなかった。」
「しかも、俺たちを認識している。これは、してやられたね。」
「どうする?1匹に攻撃したら一斉に襲ってくるだろ。全方位から攻撃されたらさすがに守りきれねえ。」
「島の中心部に行きましょう。確か、他の木よりも太い木が生えていたはずです。」
「なるほど、それを背にして戦うってことだな。」
「敵に隙を見せないように、慎重に行こう。」
ジリジリと移動していく、時折ワイバーンが低空飛行をするがその度に足を止め、隙を見せないようにする。
「ようやく着いたな。」
「よし、戦闘開始d「前衛は後衛の護衛を優先してくださいね。」…分かったよ。」
「2人は羽、尻尾、足のどれかを攻撃してください。バランスを崩して、衝突してくれると楽なんですが…」
「分かったわ。行くわよ!」
「任せて!」
カレンとアリュールによる攻撃を受け、ワイバーンは一行を単なる獲物から敵にランクアップしたようで、陣形のようなものを作り、上から火の玉を吐く。
「火の玉がなんだってんだ。」
「この程度で倒せると思われると困るね。」
クレソンとフラスが苦もなく火の玉を切り払う。
「1匹落ちたよ!」
「トドメはまだです。すべて落としてからです。」
それから数十分間ワイバーンとの戦闘が続き、すべて撃ち落とすことに成功した。
「あー、魔力切れよー」
「私も、もうダメ…」
「お疲れ様です。クレソンとフラスはワイバーンのトドメをさしてきてください。」
「了解だ。」
「心配だな。油断してやられるなよ。」
「分かっとるわ!手負いの魔物とやり合うんだ。そんなヘマしねえよ。」
「私たちはどうするの?」
「帰りは仕方が無いので、私が道を作ります。動けます?」
「ちょっと無理かも。」
「そうですね。2人は…担いで行きましょうか。」
「え?ちょっとメイちゃん?」
「ヨイショッと」
アリュールとカレンを両脇に抱える。
「うわ!」
「メイって結構筋肉あるのね。」
「くすぐったいのであまり触らないでください。」
「えい、つんつん」
「こら、やめなさい」
その日、ギルドの悩みの種であったワイバーンの群れが完全に討伐されたという報せが届いたのだった。