209話 挑戦
「カレン、これを見てください。」
「どうしたの?」
「この前ギルドに言った、スタンピードの生き残りがいないかの調査の結果です。」
「それでどうだったの?」
「調査の結果、約10体の魔物を確認し、討伐したらしいです。他にもいるかもしれないから気をつけるようにと、書いてますね。」
「それは良かったわね。危ないもの。」
メイの名前を呼ぶ声が聞こえる。
『…匠ー!師匠ー!』
「クレソンですか。叫ぶなと言ってるのに」
「今日はどうしたのかしらね。」
メイはクレソンを迎えに行ったが、先に用事を終わらせるということで、一旦席を外した。
クレソンは少し前にメイと一緒にダンジョンに行った時の話をした。
「この前さ、師匠が珍しくボーッとしてたんだよ。しかもダンジョンで」
「ホントに珍しいわね。」
「そうだろ?それでさ、思い切り魔物に噛まれてようやく気付いた感じだったんだよ。」
「ケガとか大丈夫だったの?」
「ケガするどころか逆に魔物の牙が折れたんだよ。」
「どういうこと?」
「噛まれたのに、ちょっと赤くなっただけで師匠は何ともなかったんだ。逆に魔物は思い切り噛んだせいでボキッと牙が折れたんだよ。」
「どういう魔法を使ったらそんなことになるのかしら。」
「さあな、師匠ってさ、攻撃を全部避けるんだよ。一苦労して当てても生半可な威力じゃ、傷一つ付かないって言うさ、もし敵対したら絶望だよな。」
「私もそういうのは考えたくは無いわね。」
「どうかしたんですか?」
「あ、おかえりなさい。メイが攻撃されたのに、傷一つ付かなかったって話をしてたのよ。」
「ああ、傷はできませんでしたけど、痛いは痛いんですよ。」
「そうなの?」
「当然ですよ。痛覚はあるんですから。我慢強いだけですよ。」
「ふーん、私は痛いのダメだなぁ。クレソンは?」
「ある程度は我慢できるけど、師匠みたいなのは無理だな。噛まれて無傷はな…」
「純粋にメイの防御力がキニナルわね。」
「それよりも、今日はどうしたんですか?」
「あ、その事なんだけどさ、スタンピードの生き残りがいないかの調査の件なんだけどさ。人手が足りてないらしいんだ。」
「終わったのでは無いですか?」
「終わったけど、ワイバーンの群れが巣を作ってるのが見つかってさ、どうやって倒すのかって話し合ってる段階なんだ。」
「ワイバーンですか。例の3人の内の誰かが、逃がしたってことですか?」
「そこはまだ分からないけど、その3人が未だに分かってないせいで、対処ができないんだ。」
「なるほど、それで私にどうしろと?」
「師匠なら何とかできるんじゃないかと思ってさ。」
「スタンピードの時にカレンたちと協力したと聞きましたが、1度やってみたらどうです?後ろで見守るくらいはやってあげますよ。」
「ふむ、全部師匠に頼るのもどうかと思ってたし、1回やってみるのもアリだな。」
「メイが言うなら、やってみるわ。」
「みんなに相談してくるわ。」
「私もついて行こっと。」
「頑張ってくださいね。」
善は急げとばかりに屋敷を飛び出していく2人を見て、静かにため息をつくメイだった。