208話 狩りは難しい
街から少し歩いた所に森がある。
そこそこ大きな森で、魔物だけでなく動物も多く生息している。
「何匹倒せばいいんだっけ?」
「10匹以上って書いてあったわ。」
「後ろをついて行くので、なるべく2人でやってみて下さい。」
「分かったわ。」
草木を掻き分け、ゴブリンの痕跡を探す。
「うーん。いないね。」
「これは?果物を食べた後があるわ。」
「歯型を見るに、ゴブリンじゃないですよ。」
「えー、サッと見つかるものだと思ってたけど、中々見つからないわね。」
「現実はこんな物ですよ。」
「この匂い、路地裏にいるホームレスの人達の匂いに似てる。」
「ホントね、ちょっと臭い。えっと、風上はコッチね。」
「あ、いたよ。3匹だけだね。周囲に他のゴブリンはいないみたい。」
「アリュール、やってくれる?」
「うん、ルゥやっちゃって。」
『分かったわ。』
氷の矢が飛んでいき、ゴブリンは絶命した。
「回収するのは、ゴブリンの右耳だよね。見てよこれ、こんな小さな部位にも骨がビッシリと詰まってるんだよ。ちょっと硬いんだよね。」
「見せなくていいから。」
「では、次に行きましょう。」
アリュールが木に付けられた傷を見つけた。
「この引っ掻き傷は、縄張りの印かな?」
「そうですね。ただ、ゴブリンの手より大きい気がします。」
「ゴブリンの上位種がいるのかしら?気をつけないといけないわね。」
それから数分後、
「あ、いたよ。今度は1匹だ。」
「スリリングショットの練習していい?魔物に使えるか試してみたくて。」
「うん、いいよ。」
「ふんん、えい!」
力いっぱい引いて放たれた鉄球は、ゴブリンの頭にクリーンヒットした。
「やったわ!当たった!」
「おお!すごい!」
「あら?魔物動かないわね?」
「あれ、死んでますよ。」
「え、なんで?」
「弾が頭を貫通したようです。」
「そんなに威力があるものなの?」
「命中精度が向上する魔法しか付与していないんですけど、結構威力出ますね。」
「これで威力向上なんて魔法を付与したら恐ろしいことになるわね。」
「護身用の威力じゃないよね。」
「まあ、一撃で倒せたんですから、いいと言うことにしておきましょう。」
「そうね。」
さらにゴブリンを探す。
「メイちゃん、この森ってゴブリンみたいな弱い魔物しかいないんだよね。」
「そう聞いていますよ。」
「この爪痕、弱い魔物だとは思えないんだけど。」
「これは…久しぶりに見ましたね。グレートグリズリーですね。」
「それってBランクの魔物だよね。」
「はい、森で戦うとなるとかなり不利です。なので、一旦引き上げましょう。」
「そうね、ちょっと暗くなってきたし、また明日にしましょう。」
そうして来た道を引き返そうとした時、
「ガオアアア」という威嚇の声と
「うわぁぁぁ」という悲鳴が聞こえた。
「グレートグリズリーの縄張りに入った人がいるようですね。私は先行するので、2人は警戒しながらついてきてください。」
メイが悲鳴の元まで行くと、4人の冒険者が剣を振り回しながら、グレートグリズリーを近づけさせまいとしていた。
「こっちに来るな!クソが!」
グレートグリズリーは弱い場所を探しているのだろう。
冒険者の周りをゆっくりと回っていた。
メイはグレートグリズリーの死角から背中に飛び乗り、全体重をかけて剣を脳天に突き刺した。
「グアアアア!」
グリズリーは暴れ回り、メイを振り落とそうとした。
メイは背中から飛び降り、暴れるグリズリーの首を切り落とした。
「ふぅ、大丈夫ですか?」
「え、ああ、大丈夫だ。ありがとう。」
「こんなヤツがいるなんて聞いてないぞ!」
「森の浅い所にいるということは、恐らく、スタンピードの生き残りでしょう。ギルドに調査してもらわないといけませんね。」
「そうだな。キミ1人なのか?他の仲間は?」
「後で追いついてくると思います。」
「メイ!大丈夫なの!」
「大丈夫ですよ。」
「メイちゃん速すぎだよ。全然追いつけなかった。」
「こんな大きな熊を倒したんだ。すごいね。」
「もう、真っ暗ですね。早く帰りましょう。」
グレートグリズリー討伐の証として、牙を採取して一行は帰路についた。