205話 そんな訳ないじゃん
見覚えのある真っ白な空間、
「ハロー、この前は突然ですまんかったのう。」
「出てくる頻度多くないですか?」
「多分慣れじゃと思うが、数日休めば大丈夫になったようじゃ。」
「ふーん、それで今回は?」
「ここ10年特に魔族関連の事件が多いじゃが、少しめんどうなことになってのう。」
「めんどうなこと?」
「勇者を選ぼうとしておる。」
「勇者ですか。」
「それ自体は別にいいんじゃが、問題はソナタが自由に動けなくなる可能性がある事じゃ。」
「どういうことです?」
「勇者はな、事件に巻き込まれやすい。偶然、襲撃の現場に居合わせたり、犯罪に遭遇したりな。それも魔族関連の事件ばかりじゃ。意味わからんじゃろ。」
「運命とか言うやつですかね。」
「そうなんじゃろうな。」
「勇者に私を見られる可能性がある、か。」
「そうじゃ。今まで、ソナタの正体を知っている者はいなかったが、これからはそうもいかなくなる。」
「正体って私はただの人間ですよ。」
「何言っとんじゃ。ソナタが人間な訳なかろう。」
「私の両親は人間ですよ。アナタの方が何言ってるんですか。」
「産まれた時は人間でも、後天的に亜神と呼ばれる存在へと進化、があっておるのかは分からぬが、したのじゃ。ソナタの知識を使うとすればバージョンアップじゃな。ソナタは強くなりすぎた、それに耐えるには人間という小さな器では足りなかったのじゃ。」
「人間じゃない、か。人間として生きたいという簡単な願いもこの記憶のせいでどうしようも無かったんですね。」
「慰めになるかは分からんが、その強さのおかげでソナタは大切な人を護れる。それは誇るべきことじゃ。」
「それすら無かったら、生きている意味がありませんよ。」
「後は、寿命も延びておるな。少なくとも、数百年は生きる。」
「その情報、今はいらなかった。」
「ソナタが亜神になったのはドラゴンを倒した時かのう。アレがトリガーとなったようじゃ。」
「ドラゴン、あー、いましたね。よく覚えてませんけど。」
「ソナタの剣の材料じゃろ?」
「いちいち覚えてませんよ。殺した魔物のことなんて。」
「うん、ソナタってそういうヤツじゃったな。」
「そんなことより、今は勇者の話でしょう。」
「そうじゃった。話が脱線するのがワシらの悪いところじゃ。1番の対処法と言えば、ソナタを勇者として選ぶことなんじゃが、イヤじゃろ?」
「イヤですね。」
「次点では、教会内に協力者を作ることかのう。とはいえ、ワシが話し掛けられる者は限られるがな。」
「まあ、それが1番現実的だと思います。」
「ふむ、上手く言ったらまた会いに来ることにするわい。さらばじゃー」
声が段々遠くなっていく。
「この前はこんな事無かったのに、変な演出に力を入れなくていいのに…」
亜神・・・神に準ずる存在。人間を超越した何かを持っていることが条件。メイの場合は戦闘能力。