203話 いってらっしゃい
翌朝、学園に行く準備をしていると、
「嬢ちゃん、手伝ってくれよ。」
「何をですか?」
「洗濯物干し」
「学園に行くんですけど。」
「10分で終わるからいいだろ?それに、いつも手伝ってるんだからこれくらい手伝ってもいいだろうが。」
「下手でも文句言わないでくださいね。」
「洗濯物干すのに下手とかあるのか?」
「さあ?一応の保険ですよ。」
黙々と洗濯物を干す。メイは背が届かないらしくプカプカと浮かびながら作業を進めている。
「なあ、あの2人のことどう思ってるだ?」
「どの2人ですか?」
「分かってんだろ、カレン様とアリュールのお嬢ちゃんだよ。」
「どう思っているかですか?成長していますよ。戦闘能力も精神も最初にあった頃と比べ物にならないくらいには…私はもう必要無いのかもしれません。」
「何言ってんだよ。あの2人は嬢ちゃんに追いつくために頑張ったんだろ?それを突き放すのは可哀想だぜ。それに、まだ嬢ちゃんは必要だ。急にいなくなったりしたら、それこそ精神的に不安定になっちまう。」
「そうですかね。私、こういうのはよく分からないんです。私は必要とされているのか、それともただの独りよがりなのか。」
「独りよがりがなんだってんだ。いいか?俺とサキは仇討ちを果たした。だから、ここにいる必要は無い。じゃあ、なんでまだいると思う?」
「知りませんよ。そんなこと」
「ただの興味本位とお節介だ。明確に拒絶されるまで世話焼いてやればいいんだよ。急によそよそしい態度とる方が変だろ?」
「確かに、つまり今まで以上にカイトをこき使ってもいいってことですね。」
「なんでそうなる!?」
「世話を焼いてくれるんでしょう?」
「チッ!…俺をワクワクさせる結末を見せてくれるならなんなりと使ってくれ。」
「ハズレの物語でも返品は不可ですからね。」
「大丈夫だ。今までの話だけでもお釣りがくるレベルだからな。」
「それは良かったです。ハア、アナタに気を使われるなんて悔しいですが、そんなに変でした?」
「おう、なんと言うかな、どんよりとした覇気が出てた。いつもは上手く隠してるのに、今日は隠すのにまで気が回ってないって言うか?そんな感じだ。」
「よく分かりませんが、いつもと違うと言いたいことだけは分かりました。」
「説明が下手ですまねえな。今はいつも通りに戻ってるぞ。その感じで学園に行ってこい。」
「あ、カイトのせいで学園に遅れそうです。遅刻したらカイトせいですよ。」
「遅刻したらお詫びにクッキーやるから怒るなって、いってらっしゃい」
「いってきます」