198話 異常事態
「昨日、爆発騒ぎがあったんだって、怖いねぇ。」
「爆発?」
「そう、辺り一帯丸焦げだったんだってさ。ケガ人はいなかったみたいだよ。」
「それは良かったですね。」
カイトから話は聞いていたが、人が集まる前にすべての痕跡を消すのはやっぱりダメだったか。
「メイちゃん、なんか知ってそうな顔してるね。」
「え、何も知りませんよ。昨日はアリュールと一緒にいたじゃないですか。」
「そうだけど、なんか怪しい。」
「怪しくないですよ。そんなことよりも、今日は何があるんでしたっけ?」
「今日は高等部の方で個人戦の準々決勝があるだけで中等部では何もないよ。出店回るか、高等部の試合を観に行くかどっちかだよ。」
「なるほど、アリュールはどうしたいですか?」
「まだ、準々決勝まで時間あるし、カレンちゃんと合流したいな。」
「カレンは今高等部の貴賓席にいますよ。こういうイベントも政治には大事ですからね。」
「メイちゃんは行かなくていいの?」
「私ですか?護衛は入れないらしいので、来る必要はないと言われてしまって。」
「そうなんだ。カレンちゃんとは会えないのか。」
「試合が終われば会えますよ。食べ物と飲み物を買って試合会場に行きましょうか。」
「そうだね。楽しみだなぁ。」
何かの串焼きとジュースを買い、試合会場まで急ぐ。
「色々見て回ってたらギリギリだよ。」
「もう少しで始まってしまいますね。少し急ぎましょうか…」
「どうしたの?急に立ち止まって。」
「アリュール、少し用事が出来ました。何かあってもこの学園にいること、いいですね。」
「え、ちょっとメイちゃん!?どこ行くの!?」
『ハロー、久しぶりじゃのう。』
「起きてる時でも話せるんですね。」
『今までは気を使っていたんじゃが、今はそういう状況ではないのでな。ソナタも気づいておるじゃろうが、魔物の群れが今ソナタのいる街を取り囲んでおる。』
「やっぱりですか。魔族ですか?」
『魔族ではない。じゃが、魔族の秘術を使っておる。この犯人は確実に魔族と繋がっておるぞ。』
「う…」
『ふむ、やはり起きている状態で長時間話すのはキツイようじゃな。無事を祈っておるぞ。』
この街には城壁がない。なぜなら魔法学により、城壁よりも強固な結界を構築することができるからだ。
「報告します!魔物の群れが現れました!」
「第一種戦闘配備、防御結界を構築しろ!」
「了解!結界を張れ!」
「冒険者ギルドは何をしていたんだ。スタンピードが起こるなんて報告は受けていないぞ。」
「なぜ、結界を張らないんだ!」
「ダメです!何者かによって魔法陣が破壊されています!」
「何!?仕方ない。学園や冒険者ギルドにいる魔法使いにも協力を要請しろ!」
「ハッ!」
「厳重な警備を突破できる手練が街の中にいるとするなら、マズイな。」
「市民は庁舎と学園の中に避難させろ!」
「待て、学園には騎士を配置しろ。」
「なぜです?」
「厳重な警備を突破できる程の手練がいる可能性があるからだ。」
「聞いていたな!後は異常事態マニュアルに沿って各自適切な行動をとれ!」
「「了解!」」