194話 格上
「クレソンくん5人抜きしちゃったよ。」
「ちょっとズルい気もしますが、中々いい戦いぶりだったのではないですかね。」
「私勝てる気しないんだけど。」
「応援してますね。」
「私の代わりに…」
「頑張ってください。」
「言い終わってからでもいいじゃん。ケチー!」
「アドバイスをするなら、目線に気をつけてください。」
「目線?分かったよ。」
試合が始まったが、先鋒と次鋒はあっさりとクレソンに破れた。
「なんでそこで負けるんだー!」
「ダニエル先生、うるさいです。」
「いやだってさ、もうちょっと粘れただろ、アレ!」
「外野が何を言ってもしょうがないでしょう。」
「でも、お前もそうは思わないか?」
「思いません。」
ピシャリと言い放つとダニエルは押し黙った。
アリュールの試合が始まった。
弾幕があまり意味をなさないことを悟ったアリュールは氷を繭のような形にして、その中に入り込んだ。
クレソンは繭を破壊しようとしていたが、傷1つ付かなかったため、離れて様子を見始めた。
少しして、繭にヒビが入り、氷が弾け飛んだ。
それは観客席にまで飛び、障壁をに傷をつけた。
もちろん、クレソンにも多数の破片が飛んだが、上手く回避したようで、傷は無かった。
繭があった中心には青と赤の混ざりあったローブと杖を持ったアリュールが佇んでおり、先程とはまったく違う雰囲気を醸し出していた。
クレソンも警戒して攻めあぐねていた。
突然クレソンの左腕が凍りついた。
クレソンの意識がそちらに向いた瞬間、顔のすぐ右で爆発が起き、クレソンの姿勢が崩れた。
アリュールはその隙を逃さず、リープアーツを駆使しドンドン攻め立て、立て直す隙を与えない。
クレソンは未知の攻撃を受け、戸惑いはしたもののすぐに相手を観察することにした。
そして、徐々に攻撃に対して対応していった。
「嘘!全然当たらなくなってきた!?」
「同じ攻撃を何度も喰らうかよ!」
「この!メイちゃん直伝精霊の力:滅」
「はあ!?殺す気かよ!白銀流«裂斬»」
全てを押し流す光の奔流を斬り裂く。
少しでも集中力を切らせば、奔流に当たり戦闘不能になってしまうことは容易に想像できた。
「うぉぉおお!ぜぇぜぇ、受けきったぜ。」
「嘘…アレで倒せないなんて…」
「はぁはぁ、舐めるんじゃねえ、お前も限界だろ、降参するのもありだぜ。」
「優勝するんだもん!降参なんてしない!リープアーツ」
「ハッ!そう来なくちゃな。白銀流«刹那»」
アリュールのリープアーツではクレソンの動きを捉えきれず、ギリギリではあったがクレソンの勝利に終わった。
その後、連戦の疲れからか、明らかに動きが悪くなったクレソンは副将に討ち取られたが、結局は後ろに4人控えていたDクラスが優勝した。
今回はカレンとアリュールは舞台の上で会うことはできなかったが、格上の相手と戦うという経験ができたのは大きな収穫になっただろう。
ダニエルは「ちくしょうー!」と悔しがっていたので、「賭け事はほどほどに」と言うと、「うるせえ!」と言われた。おかしい正論のはずなのに。
あちらは上手くやっているだろうか…