192話 セルフ実況
クラス対抗戦が始まった。
「Eクラスは第1試合だ。相手はCクラスだな。泥臭くても勝ちをもぎ取ってこいよ。」
「頑張ります、先生!」
「あっちも気合い入ってますね。」
「いい成績を残せば、騎士団から声がかかることもあるんだって。」
「なるほど。それはそうと、クラスメイトの実力はどれくらいでしょうか?そもそも、私これのルール知らないんですよ。」
「皆の実力はともかく、ルールくらいは目を通しておこうよ。掲示板に貼ってあったよね。」
「へー」
「あ、興味無い感じだ。クラス対抗戦は5人で勝ち抜き方式だよ。」
「要は勝てば良いんですね。」
「そうだけど、心底興味無さそうだね。」
「楽しい試合を見せてくれるなら試合のルールなんてどうでもいいので。アリュールは何番目なんですか?」
「私は3番目だよ。Cクラスはどんな人たちかな?」
「さあ、合同授業があってもCクラスとはやったこと無かったので、分からないですね。」
「そこまで強くないといいな。」
「アリュールが苦戦するくらいのちょうどいい実力ならばいいんですけどね。実力伯仲が1番楽しいんですよ。」
「他人事だ思って楽しんでるね。コノヤロー」
「応援してますから、頑張ってくださいね。」
「頑張るよ!いつかギャフンと言わせてやるんだから!」
「期待していますよ。」
先鋒同士の試合が始まった。
「実力は同じくらいですね。」
「楽しいと思えるの?」
「どちらかと言うと、やきもきする感じでしょうか?そこを攻めれば勝てるのに動かないとか、1歩下がるべきなのに突っ込んでいくとか、なぜそんな動きをするんだろう、みたいな。」
「メイちゃんから見てあの2人はズブの素人に見えるってこと?」
「そうですね。Cクラスのあの人は何かの剣術をかじっていたんでしょうが、まったく身についていませんし、Eクラスの方は完全に我流ですね。ガムシャラに剣を振り回している感じです。」
「なるほどー」
「戦闘経験があれば、あんな風にはならないんですけど、人とはおろか魔物とも戦ったことないんでしょうね。」
「あ、同時に攻撃が入ったよ。あれはどっちの勝ち?」
「当たってはいますけど、腰も入っていないあんな攻撃では有効打には程遠いとは思いますけど、Cクラスの人の方が早かったと思いますよ。」
「先鋒戦はCクラスの勝ちだって。」
「次はあの人とこっちの次鋒が戦うけど、魔法使いかどっちが勝ちそう?」
「素早く詰められればこちらの負けですが、体力を消耗しているので、どうなるかは分かりませんね。」
「発動速度の早い魔法を使わないといけないんだね。」
「そもそも、この舞台が魔法使いにとって好ましい状況ではないので、余程の実力差が無ければ詰め寄られて負けるんですよね。」
Eクラスの次鋒は連発できる魔法ではなく、ダメージが大きい魔法を選択した。
「あー、これは負けますね。」
「前衛もいないのにそんな時間がかかる魔法を使ったらダメだよ。あ、負けた。」
「近づかれて押し倒されるって1番情けない負け方じゃないですか。」
「次、私じゃん。なんかあっという間だったな。」
「訓練の成果を見せてくださいね。もしダメだったら…」
「分かってるから!想像させないで!」
「想像しただけで、泣きそうにならないでくださいよ。」
「メイちゃんには分からないんだろうなー、あの地獄が…」