190話 ネズミがいるらしい
「あ、はいこれ。」
「何ですかこれ?」
「優勝賞金だよ。」
「結構なズッシリとしてますけど、いくら入ってるんですか?」
「100万Gだったかな。」
「かなり高額ですね。決勝戦のあの人はこれが欲しかったんでしょうか?」
「さあ、どうだろうね。このお金は君の好きにするといい。」
「はい、ありがとうございます。」
「メイ、気になるんでしょ?」
「ええ、そうですね。少し話をしてきます。」
「行ってらっしゃい。私はアリュールを寮に送ってくるわ。」
「先程はどうも。」
「君は…何だか迷惑をかけたね。すまない。」
「なぜ闇の力に手を出したんですか?」
「本当は使うつもりは無かったんだ。でも、君が予想以上に強かった。だから、つい使ってしまったよ。」
「話をはぐらかさないでください。」
「…賞金が必要だったんだ。母の病を治すために。俺は、無力だ。家族が苦しんでいる時に何もできない。」
「治療費はいくら何ですか?」
「100万Gだ。そんな金を用意するなんて無理だ。」
「どんな病気何ですか?」
「血を吐いたり、一日中目が覚めなくなったりするんだ。」
「医者に診せたら、このまま悪化すれば目覚めなくなると言われた。それを治すにはある薬が必要らしいが、それは100万Gもするらしい。」
「…おかしな話ですね。血を吐く病気も、目覚めなくなる病気もありますが、その両方の症状がある病気は無いはずです。」
「なに?」
「1度診せてください。こう見えても人の身体には詳しいんですよ。」
「でも、血を吐いている光景は子どもに見せるものじゃないから。」
「大丈夫です。私は口から内臓を吐き出している死体を見たことがあります。」
「それはどんな場面なんだ…」
「そう言えば、名前何でしたっけ?」
「試合の時に言われてなかったか?」
「そう言うのは聞き流してるもので。」
「さいですか…俺はオーディスだ。よろしく、メイさん。」
「こちらこそよろしくです。」
学園から少し歩いた場所にオーディスの家があった。
「ここが家だ。」
「普通の一軒家ですね。お母様は?」
「2階の寝室にいる。」
「お邪魔します。」
ギシギシと軋む階段を上り、寝室に入る。
「母さんは寝てるみたいだな。起こすか?」
「起こさなくても大丈夫ですよ。」
魔法で身体のどこに異常があるのか調べる。
「胃に損傷が見られますね。後は、思った通り毒ですね。水が原因かもしれませんね。」
「毒ってなんで…医者に診せても病気だって!」
「その医者が無能だったか、共犯だったかのどちらかでしょうね。」
「そんな、じゃあ、母さんは、助かるのか?」
「病気であった場合、私の出番はありませんでしたが、解毒なら得意です。」
回復術で毒を解毒し、損傷を受けている部分を再生する。
「でも、どうして母さんだけなんだ?近所の人も俺もこんな風にはなっていないぞ。」
「かなり微量な毒を長期間に渡って摂取していたからでしょう。後は、個人差ですかね。それはさておき、原因はやっぱり水でしたね。解析してみてください。水には無い異物が入っているでしょう。」
「そうだな。こんな物自然には発生しない。」
「このやり方、カイトが言っていた犯人のやり方と酷似していますね。」
「何か言ったか?」
「いえ、ネズミ駆除が必要かもしれませんね。」
「ネズミ?」