184話 どうなってるの?
「先程の感覚を覚えましたか?」
「痛い以外覚えてないよ。」
「じゃあ、ルゥもう一度…」
「もう大丈夫だから!自分でやるよ!ルゥに任せると痛いんだもん。」
「では、1度出てきてください。もう一度やりましょう。」
1度ルゥを出してから再度精霊纏を試みる。
「じゃあやるよ。ん〜〜、えい!どう?できてる?」
「ええ、出来てますね。普通はもっと苦戦するはずなんですが。」
「エッヘン。」
「じゃあ、簡単な精霊術を使ってみましょうか。」
「うん。」
アリュールが精霊術を使って水の球を作り出すと、それが弾けた。
「うわ!ってイッター!!何コレ!」
「落ち着いてください。」
「落ち着いてられないよ!私の腕どうなってるの!無くなってるじゃん!」
「大丈夫です。それくらいなら治りますから。」
メイが魔力を送ると、無くなった腕が再生した。
「どういうこと?さっきの聖術じゃないよね?」
「はい。説明していませんでしたが、今アリュールの身体は半分精霊になっています。精霊はエネルギーの塊なので、エネルギーの補給をすれば簡単に元通りになるんです。」
「だから私の身体に魔力を補給すると再生したんだ。」
「はい。精霊は構造上かなり脆いんですが、それはその姿でもほとんど変わりません。」
「てことは失敗すればずっとあの痛みを感じるってこと?」
「はい。」
「今からでもやめようかな。」
「やめてもいいですけど、強くなりたいならいつかは通らなければならない道ですよ。」
「うう、しょうがないか。さっきのはどこが悪かったの?」
「魔法を使うようにやったのが失敗でしたね。精霊術と魔法は違いますから。」
「そうなんだ。じゃあどうするの?」
「水を意識してください。では私が言うことを想像してください。」
「うん、分かった。」
「アリュールは今水の中で泳いでいます、だから水があることは当然のことです。ではその水を掬って掛けてみましょう。」
「うーん、えい!」
バシャッと水が的に掛かった。
「できたよ!でも、削れてたりしてないんだね。」
「ただの水ですから。攻撃したいのならそう想像してください。」
「ん〜、こうだ!」
水の塊が的に当たり、的を砕いた。
「できたよ!これで私も強くなったってことだね!」
「飲み込みがいいですね。ただ、これだけでは精霊纏を訓練している意味がありません。」
「確かに、普通の精霊術でもできるもんね。いや、痛いから精霊術の方が便利まである。」
「タイムラグが0で精霊術を使えるそれが精霊纏の強みです。少しお手本を見せます、ルゥ。」
『行ったり来たり大変ね。』
「もう少し付き合ってください。」
「大丈夫なの?、さっきはケガしてたけど。」
「コツは掴んだので大丈夫です。ッん!」
「顔しかめてるじゃん。やっぱり痛いんだ。」
「まあ、契約していない精霊ですから、拒絶反応が出るんですよ。でも、ケガはしていませんよ。」
「確かに。」
「あの的を見てください。」
メイはそう言った瞬間、的が凍りついた。
「何の予備動作もなくあんなことができるの?」
「はい、これこそがタイムラグ無しに術を使えるということです。」
「はへー、私もこれできるようになる?」
「なりますよ。」
「ちなみにこれの名前は?」
「そうですね。…リープアーツとしておきましょうか。」
「なんか可愛い名前だね。名前はだけど。」
その日、演習場の明かりは辺りが真っ暗になるまでついたままだった。