179話 実は仲が良いの?
「おいクレソン、可愛い女の子がお前を呼んでるぞ。今度紹介してくれよ。」
「女の子?銀髪だったか?」
「ん、そうだ、銀髪だった。」
「じゃあやめとけ、痛い目みるぞ。おっかないからな。」
「何言ってるんだ。あんなに可愛らしい子がおっかないなんてことあるわけないだろ。」
「人を見た目で判断するのは辞めておいた方がいい。忠告はしたぞ。」
俺たちは長期休暇が終わりに近づいたこともあり、学園に帰ってきていた。
「一緒に来たんですね。」
「そこで一緒になったんだ。」
「てっきりまだダンジョンの方にいるのかと思って探しに行ってしまいましたよ。」
「あー、それは世話かけたな。いつ帰るか言っとくべきだった。」
「いえ、私も聞いていなかったので。それで準備ができたので、先方と会ってもらおうかと思って来たんですけど、時間あります?」
「俺はあるぞ。暇してたからな。」
「俺もあるよ。というかあっても行くよ、俺たちが頼んだことだからね。」
「そうですか。ホントは会わせたくなかったんですが、駄々をこねるのでしょうがなく…」
「なんか大変そうだな。」
「今から会いに行くのはどんな人なんだ?」
「私はあまり好きなタイプではありませんが、人によっては頼りになると思われるタイプですね。」
「ふんふん、その人とはどんな関係で?」
「ビジネスの関係ですよ。互いの利益のためだけの関係です。それ以上でも以下でもないです。」
「ふーん。師匠ってさ、達観してるって言われない?」
「達観ですか?あまり言われませんよ。」
「そうか、じゃあ師匠は大人ってことでいいや。」
「そんな適当な。」
「ようこそ、歓迎するぜ。俺はこの組織のボス、ゼファーソンだ。お前たちがあれを見つけたのか。」
「そうです。組織に引き込もうとか考えないでくださいね。」
「何言ってんだ、優秀な人間は組織に必要だろ。俺らがこの世界で生き残っていくためにもな。」
師匠からは怒気が発されていて、後ろからは見えなかったが、相手を睨んでいたのだろう、ゼファーソンは素直に引いた。
「ハイハイ、引き込んだりしねえよ。」
たださえ怖い師匠が無言で睨んでくるとか、ちびりそうだ。
「とりあえず、顔は覚えた。今後組員がそいつらに手を出すことは無いだろう。」
「そうですか。それはよかったです。」
「んで、オークションのことだが、コイツらは会場に行くのか?」
「どうしますか?あなた達が決めてください。」
「え、師匠は行くのか?」
「行きますよ。」
「んー、どうする?」
「行くメリットが無いと危険しかないと思うよ。ゼファーソンさんの組織は明らかに裏の組織だ。ということは敵対組織に顔を覚えられるかもしれない。そんな危険を犯してまで行く必要はないと思う。」
「そうだな。俺たちはやめておくよ。」
「そうですか。だそうです。」
「師匠…か、ブフッ、アンタが師匠って世も末だな。」
「捻り潰しますよ。」
「スマン、スマン、予想外の単語が聞こえてきたからよ。ププ」
「…」
「ごめんて、まあ行かないってんならもう会うことはない。」
「ここを出れば赤の他人です。会っても軽々しく声をかけてはいけませんよ。この人と話してるだけで、衛兵にマークされますからね。」
「されねえわ。まあ、そういうことだからよ。師匠の言うことはちゃんと聞いて良い子にするんだぞ。そうじゃないと俺らみたいになっちまうからな。」
「さすが、先人は違いますね。」
「お前に言われると腹立つわ〜。」
嫌いとか言ってるくせに結構仲がいいのかと思ったが、空気を読んで何も言わない2人だった。