174話 取引
「師匠はすごいよな。いつの間にそんなパイプを繋げてたのか。」
「師匠はすごいけど、師匠の歳で相手してくれるところって絶対ヤバイと思うんだよ。」
「それはそうだな。まあ、師匠って犯罪にそこまで抵抗感無さそうだし、ちょっとアウトローみたいなヤツらと交流があってもおかしくないんじゃないか?」
「師匠はできないんじゃなくて、やらないだけだからね。必要があれば躊躇なくやるだろうね。ただ、別れ際師匠怒ってるような気がしたんだよ。」
「怒ってる?俺たちなんかしたか?」
「何だろう、俺たちに向けて怒ってる感じじゃなかったんだ。その場にはいない誰かに怒ってた感じ?」
「聞かれても分かんねえよ。でも、師匠のことだから俺たちのためにすぐに動いてくれてるんじゃねえの?だったら、怒ってる相手は絞られてくるだろ。」
「別に無理して欲しい訳じゃないんだけどな。」
「師匠は無理しないだろ、気に入らなければすぐに潰してると思うぞ。」
「確かに、ということは気に入らないけど潰すほど悪さをしているヤツらじゃないってことかな?」
「さあな、それよりもさ、師匠から返されたこの本をどうするか考えようぜ。」
「捨てるか、古本屋にでも売って来いって言ってたやつだね。この近くの古本屋で処分しようか。」
「結構量があるから重いんだよこれ、しかも古本屋遠いし。」
「頑張れ!」
「てめぇも半分持てや!」
メイ視点
薄暗い建物の中でメイは男と向かい合って座っていた。
「久しぶりだな、お嬢ちゃん。」
「あれから悪さはしていないようで、良かったです。」
「はっ!アンタのせいでコッチは商売上がったりだよ。それで、今日は何の用だ?」
「これを見てください。」
ゴトっと机に魔宝石を置く、
「これは、ただの宝石じゃないな。」
「これは魔宝石です。これをオークションに出したいんです。」
「なるほど、名義を貸せってことか、手数料は4%くらいか?」
「もっと吹っかけてくるかと思ったんですが。どういう風の吹き回しですか。」
「アンタの機嫌を損ねないようにしたんだろうが、腹の探り合いは意味が無い、盤をひっくり返す力があるのはアンタだからだ。」
「そうですか、それは話が早くて助かりますね。」
「これの価値はどれくらいだ?」
「1億は越えます。後はこの書物ですね。」
「これは?」
「古代語の魔法書です。これも100万は越えてくるでしょう。」
「それで、誰なんだこれを持ってきたヤツってのは。」
「…やはり合わせたくはありませんね。彼らは純粋なのであなたみたいな悪人と接すれば悪影響が出かねません。」
「おい、俺たちと取引してる時点でお前も同類だろ。」
「こんな美少女を捕まえて悪人だなんて、目が節穴なんじゃないんですか。」
「美少女かどうかは関係ないだろうが!」
「ヤダー、このオジサン怖い〜。」
「このガキ…」
「まあ、それはともかく、会いたいですか?」
「俺は人を見て判断するって知ってるだろ?」
「準備が出来たら教えてください。その後会わせます。」
「へいへい、ってこれ置いていくのかよ。」
「1つでも欠けていれば分かりますから。そのつもりで。」
「まったくあのガキは…」
「ボス、あんなガキに主導権を握られたままでいいんですかい。」
「うるせえ。お前も見ただろうが、人間が一瞬で蒸発したんだぞ!詠唱も無しに!」
「あれは、何かのトリックだったとか…」
「じゃあ、お前が身をもって体験して来ればいい、トリックだという証拠がない限り俺は動かない。部下を無駄に死なせる訳にはいかねえんだ。」
「ボス…すいません。軽率でした。」
「分かったならいい。」